【米本社が売却検討】世界屈指の成功例「日本のスタバ」の30年 抹茶とご当地店で2,000店超の“優等生”が売られるワケ

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日本発の価値

 そして見逃せないのが、日本発で世界に広がった商品・サービスの存在だ。これは「日本事業が単なる出店拠点ではなく、商品開発の発信地でもあった」ことを示している。

 象徴的なのが抹茶系ドリンクだ。スタバのチルドカップシリーズは2005年9月に世界に先駆けて日本で発売され、2008年にはコーヒーを使わないデザートドリンクとして「京都抹茶ラテ」が登場した。抹茶という和の素材をグローバルブランドが本格的にメニュー化した流れは、今や世界的な「マッチャブーム」の先駆けと位置づけられる。

 近年スタバは、石臼挽き抹茶を使った専門業態「ティバーナ ストア」を、日本創業の地・銀座に国内2,000号店としてオープンさせるなど、お茶業態を強化している。1,500円近い高額商品も話題になり、訪日客の取り込みも視野に入る。インバウンドと抹茶ブームの追い風を考えれば、日本事業の資産価値はむしろ高まっているとも言える。今回の売却検討で買い手がつくなら高値が見込める、という算段も働いているはずだ。

「ご当地スタバ」が景観に溶け込む

 私個人が出張のたびに各地で足を運んできたコンセプトストアも、日本のスタバ文化を語るうえで外せないものだ。

 その代表格が、建築家・隈研吾氏設計の「太宰府天満宮表参道店」(2011年開業)だ。伝統的な木組み構造を用い、「自然素材による伝統と現代の融合」をテーマに、参道の景観に溶け込むデザインで知られている。

 ほかにも、畳の上で楽しめる「京都二寧坂ヤサカ茶屋店」、鴨川の納涼床文化を取り入れた京都の店舗、蔵造りの街並みに合わせた川越の店舗、多摩川を一望する二子玉川公園店など、その土地の歴史や景観に合わせた特別な店舗が全国に点在している。

 こうした「画一的チェーンに見えて、実は地域性を丁寧に取り込む」という二面性こそ、日本のスタバが愛された核心ではないだろうか。

売却されても価値は変わらない

 今回の報道は、グローバル企業の厳しい資本論理を感じさせるニュースだった。

 日本のスタバは、上にあげたようないくつもの要素を日本市場に最適化させたことで、本国超えの支持を得た稀有な事例だ。その優等生が、本国の都合で売却検討の対象になる……グローバル企業における「日本事業」の立ち位置の現実を、改めて突きつけられた格好だ。

 ただ、逆に言えば、それだけ日本事業の価値が高いということでもある。

 もし今後、日本資本や国内投資家が関与する形になれば、さらに日本市場に根差した進化を遂げる可能性もあるだろう。もちろん現時点では予備的協議の段階であり、結論は出ていない。だが、私たちが日常的に利用している一杯のラテの裏側で、世界的ブランドの大きな転換点が動き始めていることだけは確かだ。

取材・文/渡辺広明

デイリー新潮編集部

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