複雑すぎる構図も下描きなしでサラサラと…「生成AI」など足元にも及ばない「手塚治虫」の“神技”が炸裂したサイン会での驚愕エピソード
一発描きの技術は伝統芸能の域に
手塚氏は漫画史上トップレベルにサービス精神が旺盛な漫画家であったが、総じて昔の漫画家は、ファンに対して気軽にサインに応じていたなどのエピソードが多い。筆者は、当時の漫画家が置かれていた状況も、影響していたとみる。今では考えられないことだが、かつて漫画は悪書の象徴であり、漫画家の地位も高くなかった。そんななか、手塚氏は人前に積極的に出て、漫画家の地位向上に努めようとした。
そのためには漫画家という仕事を世間に知ってもらうこと、そして一人でも多くのファンを生み出し、支持を広げていく必要があった。こうした漫画と漫画家という職業にかける情熱が、手塚氏の唯一無二のパフォーマンスと神対応に結実したと言っていいのではないだろうか。
さて、YouTuberでイラストレーターのさいとうなおき氏が、「アナログ一発描きのやり方」を動画にしていた。手塚氏のような、即興で絵を描く方法を解説したものである。いくらでもやり直しが利くデジタルに慣れた若い世代にとって、一発描きは憧れであり、特殊技能として映るようだ。
現在、商業の場で活躍している漫画家の9割以上が、デジタルで作画しているといわれる。アナログで漫画を描く技術は、もはや“伝統芸能”と言ってもいいような状況になっており、一種の職人技になった。一方で、デジタルの進化や、生成AIの普及とともに、アナログの技術が見直されつつある。手塚氏の一発描きのテクニックは、今こそ再注目されるべきであろう。
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