「健康は血管で決まる」 1日5分でオッケーな「ずぼらストレッチ」とは エキスパートが解説

ドクター新潮 ライフ

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「第二の心臓」

 血流が滞ってしまう最大の要因はとてもシンプルで、「動いていない」からです。

 現代人は、驚くほど活動量が少なくなっています。朝起きてから夜寝るまでの一日を思い浮かべてみてください。通勤は電車や車で座り、職場ではパソコンの前に座り続ける。会議でも座り、帰宅後はソファに沈み込み、スマートフォンやテレビを眺める。食事の時間ですら椅子に座ったまま。気付けば、立っている時間の方が圧倒的に少ない。そんな生活を送っている人も多いのではないでしょうか。

 座り過ぎは医学的に、“新たな生活習慣病”とも言われています。長時間座り続けることで、下半身では血液の渋滞している状態になるのです。

 血液が流れるのは心臓がポンプの役割を果たしているから。このことは多くの方がご存じでしょう。しかし、心臓の力だけで全身を巡っているわけではありません。むしろ重要なのは、筋肉の収縮による押し上げる力です。特にふくらはぎや太ももなどの下半身の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、血液を心臓へと送り返す役割を担っています。

 その筋肉がほとんど使われない状態が続くとどうなるか。血液が下半身にたまりやすくなり、血液の流れはどんどん鈍くなってしまいます。血流が滞り、血管の内側では慢性的に炎症が起こりやすくなり、やがて傷口に悪玉コレステロールなどが入り込みプラークが形成される。プラークが徐々に増大し血管の内側が狭くなり、さらにプラーク破裂のリスクや血流悪化を招く「負の連鎖」となるのです。

 厄介なのは、このプロセスが静かに進行することです。初期のサインは、あくまで軽い不調として現れます。

 ・足の冷えやむくみ

 ・疲れやすさ、だるさ

 ・肩こり

 ・頭が重い、集中できない

 どれも「年齢のせい」「疲れているだけ」と片付けてしまいがちな症状です。しかし、こうした小さな違和感こそが、血流低下のサイン。放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患として表面化します。

 健康は、ある日突然失われるのではありません。日々の「動かないこと」の積み重ねによって、静かにむしばまれていくのです。

運動8割、食事2割

 では、この負の連鎖を断ち切るにはどうすればいいのでしょうか。多くの人は生活習慣の中でもまず食事の改善を思い浮かべるでしょう。塩分を控える、脂質を減らす、野菜を増やす。どれも正しいアプローチです。しかし私は、患者さんにあえてこのようにお伝えしています。

「運動8割、食事2割」

 とはいえ、ここでいう運動はランニングや筋トレのようなハードなものではありません。必要なのは、「ゆるく、気持ちよく続けられる動き」です。

 その考えを実証するのが、ある患者さんのケースです。その方は頸動脈がプラークによって約半分も閉塞している状態でした。脳へ血液を送る重要な血管が著しく狭くなっており、いつ脳梗塞を起こしてもおかしくない危険な状態です。複数の医療機関を受診したものの、投薬では改善しませんでした。当時は手術も一般的ではなく、「これ以上できることはない」と告げられ途方に暮れていたところで私の病院を訪ねてきました。

「とっておきの方法を試してみますか?」

 私の提案に対して患者さんは、新しい薬や高度な手術を想像していたはずです。しかし私が提案したのは、「下半身を中心としたストレッチをゆるくやってみてください」というあまりにも拍子抜けするものでした。

「命に関わるかもしれないのに、それだけでいいんですか?」

 多くの方がそう感じることでしょう。しかし、ここに血管改善の本質があります。

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