“原爆の爪痕”に肉薄した『ヒロシマ』の衝撃…巨匠・土門拳“金字塔的写真集”の原点は創刊2年目の「週刊新潮」にあった

  • ブックマーク

「写真界の直木賞」

 現在、東京・新宿のニコンプラザ東京 THE GALLERYで、第45回土門拳賞受賞作品展が開催されている(5月12日まで。その後、大阪でも)。今回の受賞作は、永橋和雄氏の写真集『チベットの迷宮 ポタラ宮殿』(三省堂書店/創英社刊)。中国西部、チベットの世界遺産「ポタラ宮」周辺を、長年にわたって記録した労作だ。

 土門拳賞は文字通り、写真家・土門拳の業績を讃え、毎日新聞社が主催している賞だ。木村伊兵衛写真賞が「写真界の芥川賞」と呼ばれ、こちらは「写真界の直木賞」などと呼ばれる。

 土門拳(1909~1990)は、『筑豊のこどもたち』(1960)、『古寺巡礼』(1963~75)、『文楽』(1972)などで知られる写真家で、“リアリズムの巨匠”とも称された。演出を一切廃した、徹底的にリアルな写真で知られた。そのため、ポートレイトでは、顔のシワの深さやシミまで写し取ってしまうので、撮られることを嫌がる著名人も多かった。

 そんな土門拳が、初期に注目を浴びた写真集が『ヒロシマ』(研光社、1958)である。原爆投下から敗戦後、まだ十数年の広島に乗り込み、町中や、病院での原爆症の治療や手術の様子をありのままに撮っていた。てっきり復興がなったと思われた広島だが、原爆の爪痕は、すこしも癒えていないことを伝える、衝撃的な写真集だった。

 実は、この土門拳の原点ともいえる名作『ヒロシマ』が誕生したきっかけは、週刊新潮にあったことを、ご存じだろうか。

次ページ:特別レポート〈八月六日の遺産〉とは

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。