白内障手術から1年 「眼内レンズに濁りが…」 体験者が語る「後発白内障」という落とし穴と、術後の副作用

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「空中に黒い塵が」

 手術を受けたのは、入院施設がある総合病院だった。

「瞳孔を広げる(散瞳(さんどう))目薬の後で、麻酔の目薬を入れてね、白内障のときとは違って、椅子に座って手術を受けるんだよ。機械の上に顎を乗せると、額をバンドで固定された」

 この後、本人は「細かいことは覚えていない」と話すのだが、レーザー照射の前に、目に専用のコンタクトレンズを乗せる。そのレンズの上からレーザーを当て、濁った部分に穴を開けるのだ。

「術中はまぶしくて△とか◇とかの図形みたいなものが見えたけど、なにがどうなっているのか分からないうちに終わった。レーザーが当たっていたのは、2~3分くらいじゃないかなぁ。とにかく時間は短かった」

 手術室にいたのは、10分から15分ほどだった。

「術中も術後も痛みは全くなかった。最後に炎症を抑える目薬を入れて終わり」

 Aさんが驚いたのは、術後さほど時間を置かずに、視力が回復したことだった。

「翌日に新聞を読んだら、細かい字まで奇麗に見えたんだよ。うれしかったねえ」

 医師から注意されたのは、術後の眼圧上昇と炎症を防ぐために処方された薬を1週間、きちんと点眼することくらいで、白内障の手術後のように、1週間ほど入浴や洗髪、洗顔を避ける必要はなかった。

 だが、視力が見事に回復して一件落着かと思いきや、Aさんは予想外の副作用を経験する。

「空中にモワモワした黒い塵が浮かんで見えるようになったんだ。背景が白いときには、小さな虫が大量に飛んでいるみたいで、気持ちが悪かった。驚いて、病院に行ったら、一時的な飛蚊(ひぶん)症だと言われた」

 これはYAGレーザー後嚢切開術の後によく見られる症状で、破砕した後嚢の破片が目の中で散らばることから起きる現象である。

誰にでも起こりうる合併症

 問題は、飛蚊症が消えず、むしろ悪化するケースだ。網膜剥離のような重篤な合併症が疑われる。

 Aさんの場合は2週間ほどで、破片が吸収され、飛蚊症の症状は消えた。

 手術の費用については、保険が適用され、3割負担のAさんの支払いは、4800円ほどだったという。

「実は、俺の姉貴も白内障手術の後で後発白内障になったんだ。姉貴の場合は、7年くらい後で気付いたんだけど、その間は眼鏡の度数を変えてしのいでいた。本人は年を取ったから、目の機能も弱ったと考えていたそうだけど、眼内レンズは一生使えるんだから、視力が落ちたら、別な原因を考えるべきなんだよね」

 Aさんの姉がいい例だが、白内障の手術後、何年かたって視力の低下を感じても、年齢による衰えと考えて、診察を受けない人がいる。

 けれど、予防法がないという後発白内障は、誰にでも起こりうる合併症であり、自分は大丈夫と安心はできない。早期発見、早期対策のために、年に何度かの眼科検診をお勧めする。

松田美智子(まつだみちこ)
作家。1949年生まれ。フィクション、ノンフィクション共に多くの作品を手がけてきた。小説に『天国のスープ』、ノンフィクション作品に『仁義なき戦い 菅原文太伝』『水谷豊 自伝』(共著)などがある。

週刊新潮 2026年3月19日号掲載

特別読物「体験ルポ 白内障手術から1年… まさかの『後発白内障』という落とし穴」より

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