白内障手術から1年 「眼内レンズに濁りが…」 体験者が語る「後発白内障」という落とし穴と、術後の副作用

ドクター新潮 ライフ

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「約束が違う!」

 眼内レンズ裏の濁りは、私が恐れていた術後の合併症だった。白内障手術を受けた人の誰にでも起こりうるとされる合併症で、後発白内障(PCO)という。

 症状は、術後半年から5年の間に約20~30%の人に出現するといわれているが、私がその対象になったことにまず驚いた。

「手術とか、何か治療が必要な状態なのでしょうか」

 白内障手術直後の視力は両目とも1.2まで回復していた。医師の指示通り、2カ月ごとに検査を受け、処方された3種類の目薬もきちんと点眼していた。

 また、眼の疲れを防ぐために、スマホの画面を見る時間を制限し、外出時には紫外線防止用のサングラスもかけた。やれることはやったつもりだ。

 それなのに、新たな病気が発症したというのだから、「約束が違う!」と叫びたくなるような心境だった。

まるで白内障の再発

 しかし、やんごとなきあの方も同じ病気を発症されたことを思い出した。

 2019年、美智子上皇后さまは84歳という高齢で白内障手術を受けられた。

 何年も前から視力の衰えを感じておられたようだが、公務を優先された結果、手術が遅れたと報道されている。宮内庁は「もう少し遅れれば難しい手術になった」と発表。手術後に薄い色のサングラスをかけておられた姿が印象的だった。

 だが、翌年の20年には右目の後発白内障が見つかり、22年に手術をなさっている。短期間のうちに再度手術が必要になったのだ。

 そもそも、後発白内障とは、どんな病気なのか。

 それを知るために、まず白内障手術について、おさらいをしておく。

 白内障手術は超音波乳化吸引術と呼ばれ、最初に水晶体嚢(すいしょうたいのう)という透明な袋の上部を円形に切り抜く。そこから濁った水晶体の核(中身)を超音波で砕いて吸引するというものだ。

 その後、水晶体嚢の中に人工の眼内レンズを挿入して終了する。

 しかし、このとき、眼内レンズを包む水晶体嚢の内側には、タンパク質の細胞が残っている。線維細胞と、水晶体の表面を覆う上皮細胞の2種類である。

 このうち上皮細胞は増殖が可能な細胞で、手術による損傷を修復するための治癒反応を起こす。本来なら、自然治癒力は好ましいものだが、この反応こそが後発白内障の大きな要因である。

 上皮細胞が水晶体嚢の後ろ側、後嚢(こうのう)と呼ばれる部分に移動、増殖し、水分を含んで膨張すると、レンズに濁りが生じる。

 その結果、視界がぼやける、物が二重に見える、光がまぶしい、視力の低下といった症状が現れる。これが後発白内障である。

 まるで白内障が再発したかのような症状だが、現時点で上皮細胞の増殖を予防する方法はないという。

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