広島カープ「羽月隆太郎被告」が契約解除に…原因となった「ゾンビたばこ」の正体を元マトリ部長が徹底解説 「SNSでは“Kペン”の隠語や“象とペン”のミックス絵文字を使って密売されている」

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台湾では覚醒剤と同レベルの“毒品”扱い

 ゾンビたばこは1~2服の吸引でアルコールに酔ったような状態になる。それ以上、続けると足元がおぼつかなくなり、腰を屈めてふらつきだす。そうなると目の焦点が合わなくなって、まともに喋れることもできない。いきなり震えだし、痙攣しながら昏睡してしまう者も少なくない。なかには混乱や異常な興奮を来して、自分の行動を制御できなくなる者も見かける。

「先日、走行中の車に半裸の状態でぶら下がり、喚めき散らす男と出くわした。これには驚いた……。こういった様子から使用者はゾンビ(喪屍)と揶揄されるようになって、ゾンビたばこという名称が生まれたのです」

 その後も台湾では、ゾンビたばこが多くの事件や事故を誘発し続けた。そして、2024年8月5日、台湾政府はエトミデートを毒品危害防制条例(日本の麻薬関係法律に匹敵)の“第3級物資”に指定する。第3級にはケタミン、コデインなどの物質が収載されている。だが、それでも被害が拡大し続けたため、同年11月14日には、覚醒剤やMDMA、LSD、大麻などと同レベルの“第2級物質”に格上げして取締りを強化するに至ったという。

 筆者の記憶では、時を同じくしてエトミデートが沖縄に上陸したように思う。香港、中国、韓国といった国や都市でも同様に規制を強化しているが、読者もご承知のとおり、沖縄では「笑気麻酔」という名称でゾンビたばこが急速に拡散し、若者たちを蝕んでいった。25年に入ると、国や沖縄県は事態を重くみて注意喚起を徹底。5月16日には、厚生労働省がエトミデートを医薬品医療機器法上の指定薬物に指定(施行は5月26日)し、本格的な取締りを開始した経緯がある。

(2)エトミデートは医療でも使われているのか。

 海外の多くの国々でエトミデートは鎮静剤や麻酔導入薬として用いられている。以下は少し専門的な解説になるが、ぜひ知ってほしいので記述していきたい。

 エトミデートは通称名で、物質名は「エチル=1-(1-フェニルエチル)-1H-イミダゾール-5-カルボキシラート」という。医学文献によれば1964年に合成され、72年から医療現場で実用化されている。

 速効性があって効力も高く、体内分解や排出も速い。さらに安価に合成できるため、全身麻酔手術の導入静脈麻酔(患者を速やかに入眠状態にするために静脈に注入する麻酔)や、処置鎮静剤(内視鏡検査などで患者の意識レベルを低下させ、うたた寝のような状態にする麻酔)などとして、欧米やアジア各国で使用されるようになった。

 ところが、副腎皮質機能を抑制したり、子どもに投与した場合に認知機能障害を引き起こしたりする可能性などが示されたため、アメリカやカナダ、オーストラリアなどでは使用を中止にしている。日本ではそもそも安全性が定かでなかったためか医薬品として承認していない。より安全で効果的な麻酔が存在するということも理由だったのだろう。今般、日本でも不正エトミデートの含有物が出回り、急速に拡散したため、上記の経過を辿って規制されることとなった。

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