育児放棄のパンチくんが“オラン母さん”を選んだ理由 先輩は“リラ母さん”を支えに 販売元のイケアも喜び「いつか必要としなくなる日が来るのを…」
販売元「こんなに嬉しいことはない」
パンチの心の拠り所となっている「オランママ」「オラン母さん」はSNSから生まれた呼び名で、
「僕らは“お母ちゃん”と呼んでいました(笑)」(鹿野さん)
園には「オラン母さんは買えるのか」という問い合わせも入ったそうだが、このぬいぐるみはスウェーデン発の家具店「イケア」で販売されているものだ。
イケア広報によると、
「『DJUNGELSKOG(ジュンゲルスコグ)ソフトトイ オランウータン』という商品名で、販売価格は1499円。2018年の発売以来、長く愛され続けており、現在イケアで展開している55種類のソフトトイの中でもトップ5に入るほどの大人気商品です」
「やさしく可愛い表情」「柔らかい肌ざわり」「リアルさと親しみやすさのバランス」が好評だそうで、パンチくんでなくとも抱きしめたくなるぬいぐるみのようだ。17日にはイケア・ジャパンの代表取締役兼社長兼CSOのペトラ・ファーレ氏が来園し、オランママの他にもたくさんのぬいぐるみを寄贈した。
「私たちのソフトトイが、パンチくんの毎日を少しでも支えられているのであれば、これほど嬉しいことはありません。いずれパンチくんが仲間のサルたちとの生活になじみ、ぬいぐるみを必要としなくなる日が来ることを願いながら、それまでの間は、パンチくんにとって安心できる存在でいてくれたらと思っています」(イケア広報、以下同)
「オラン母さん」「オランママ」と呼ばれていることについては、
「パンチくんにとって安心できる存在として呼ばれていることがとても嬉しいですね。とても素敵で、心温まる名前をいただき光栄です」
ただし、犬などの動物に与える際には注意点も。各国で厳しい安全基準を満たした、健康と安全にリスクのない製品だと断ったうえで、
「鋭い歯で強く噛むことでソフトトイが引き伸ばされたり破れたりし、中身が露出してしまう可能性があります。そうした中身を、近くにいる子どもが誤って口にしてしまうリスクも考えられます。そのため、動物がソフトトイを使用する際には、飼い主の皆さまに、必ず注意深く見守っていただくようお願いしています」
パンチの好きなもの
市川市動植物園でのサル山の見どころは、15時の食事タイム。飼育員が準備をしている気配を察したサルたちは、扉の格子にしがみつくなど、興奮して食事が出てくるのを待っている。パンチはというと、少し離れたところで仲間たちの様子を見つめている。
時間になり、宮腰さんたちがリンゴやさつまいもなどを歩きながらサルたちに与えていく。すごい勢いでエサを取っていくサルたちの中、パンチはピッタリと宮腰さんの足にしがみつき、離れない。まだまだ甘えん坊のパンチが、エサ以上に好きなのは……
「僕たちに甘えてくるんです。今はパンチが無事に群れに入ることがいちばんなので、エサが取れなくて空腹になるという不安感は与えないように、裏で別に与えています。お腹いっぱいになれば気持ちも落ち着きますし。哺乳瓶を使ってミルクも与えています。抱きつく以外に哺乳も大切で、安心感を得られますから。まずはストレスをなくして、群れに入ることに集中させてやりたいんです」(宮腰さん)
そんな飼育員たちの思いもあり、群れのサルたちとのコミュニケーションもかなり取れるようになってきているという。ここ何日かのパンチについて宮腰さんは、
「しつこく絡んで威嚇されたりすることもありますが、結構立ち直りが早いです。意外と図太いのかも」
と、笑う。パンチがこれだけ注目を浴び、大勢の人が見にきてくれることを喜びつつ、こんな思いも語ってくれた。
「人工哺育については色々な意見もあります。良くも悪くも彼らの人生に人間が手を入れてしまったことで、責任が生まれることもわかっています。ただそのことで救える命もあるので、人工哺育の意義など皆さんに正しい状況を発信していかなくては、と思っています」(宮腰さん)
群れに少しずつ馴染みながら、今日も元気にパンチはオラン母さんを抱え、サル山を走り回っている。いちばん大切なのは、これからパンチが仲間と一緒に生きていける環境にいられることだろう。















