「あんたに似た遺体を見つけた」母に告げられたその晩、枕元に“それ”は現れた… 怪談作家が読み解く「正体」とは【川奈まり子の百物語】

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片割れ

「私には、そうは思えないんですよ」と女性。

「夢にしては生々しすぎましたし……おかしなことを言うと思われるかもしれませんけど、あれ以来、私はとても元気なのです。

 それまでは、何かちょっと嫌なことがあると、すぐに鬱っぽくなって、くよくよ悩んだり、何もやる気が起こらなくなったりしていたのに。

 今は、どんなことが起ころうと、落ち込む気配もありません。

 だから、公園で首を吊った女性は、私の代わりに死んでくれたんだと思うことにしました。

 つまり、私に出来ることは、彼女の代わりに生きることなんですよ」

 彼女の話を伺った後、私は数々の人が自殺してきたという木立ちの景色を想い起しながら、奇妙な思いに捉われた。

 誰しも特別ではなく、自分とよく似た人が存在していて、お互いに関知することなく、意外なほど近い場所で似たような人生を歩んでいるのかもしれない。

 そして、見知らぬ片割れとも呼ぶべき自分そっくりなその人が、自分の代わりに絶望し、場合によっては、自分の代わりに亡くなってくれている。

 まだ見ぬ片割れが亡くなった代わりに、あなたも、私も、今日という日を生き生きと過ごしている。

 そんな可能性もあるかもしれない、と……。

――― 

記事前半】では、女性の母が遺体を見つけた「自死の多い公園」と、そこにまつわる不幸なカップルの事件について語っている。 

川奈まり子(かわな まりこ)
1967年東京生まれ。作家。怪異の体験者と場所を取材し、これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集。怪談の語り部としても活動。『実話四谷怪談』(講談社)、『東京をんな語り』(角川ホラー文庫)、『八王子怪談』(竹書房怪談文庫)など著書多数。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。2025年発売の近著は『最恐物件集 家怪』(集英社文庫8月刊/解説:神永学)、『怪談屋怪談2』(笠間書院7月刊)、『一〇八怪談 隠里』(竹書房怪談文庫6月刊)、『告白怪談 そこにいる。』(河出書房新社5月刊)、『京王沿線怪談』(共著:吉田悠軌/竹書房怪談文庫4月刊)

デイリー新潮編集部

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