「あんたに似た遺体を見つけた」母に告げられたその晩、枕元に“それ”は現れた… 怪談作家が読み解く「正体」とは【川奈まり子の百物語】
それ
「横を向いて寝ていたので、起きるのと同時に、それと目が合ってしまいました。
女が、首を左に傾げて、私の顔を覗き込んでいたのです。
カーテン越しに街の明かりが入ってきてはいましたが、部屋は薄暗くて、最初は、ぼんやりしたシルエットしか見えませんでした。
どうやら、ベッドの枕もとの床に座り込んでいるようです。
『おかあさん?』と私は言いました。
咄嗟に母かと思ったんですよ。
でも、そう問いかけた途端に違う……と。
母よりも髪が長くて、上背がありそうでしたから。
その間にも目が慣れてきて、蛇のような長いものが、その女の胸もとから右肩に掛けて巻きついているのがわかりました。
それは、ロープでした。
首から下がったロープの輪の半分と、木の枝に結んでいたであろう部分です。
麻縄というのでしょうか? 薄茶色で、少し毛羽だった感じの……」
告白
「母は、公園で発見した遺体は、木の根もとに座り込んでいたと言っていました。
ロープの端を枝に結ぶときの結わえ方が悪くて、体重が掛かると、ほどけてきてしまったのでしょうね。
でも、命を失うには充分なぐらいには、吊られていたのだと思います。
私は歯の根も合わないほどガタガタ震えながら、手探りで、ベッドサイドの照明器具のスイッチを入れました。
枕もとがパッと明るむと、その女の姿はみるみる薄くなっていったのですが……完全に消えるまでの刹那に、私は、はっきり視てしまいました。
女は、首を傾げているのではありませんでした。
頸の骨が折れて、頭が左の肩に乗っていたのです。
頸の右側がありえないぐらい長く伸びていました。
そして……その顔や髪形は私そっくりでした!
母が取り乱すのも無理はありません。
女が消えると、私はすぐに足もとの方の壁際にあるクローゼットを開けて、女が着ていたのと似ている服をすべて取り出して、ゴミ箱に突っ込んでしまいました。
似ているどころではなく、最近、ファストファッション・ブランドで買った量産品でしたから、同じ品物だった可能性もあります。
……母からあんな話を聞かされたせいで、私は夢を見たのでしょうか?」
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