杉並区公立小で小2男児にいじめ 「重大事態」認定も、進まぬ区の調査 被害児童は「6対1で殴られ、内股を膝蹴りされ…」、今も不登校が続く
文部科学省が昨年10月29日、2024年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を公表。小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数が前年度から3万6454件増加し過去最多となったことがわかった。とくに小学校でのいじめ認知件数は抜きん出ており、中学校の13万5865件をはるかに超える61万612件となっている。
全体の認知件数のうち1404件が「重大事態」と認定されている。重大事態とは、いじめにより児童の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑い、または、いじめにより不登校を余儀なくされている疑いにあることを指すが、こちらも過去最多となっている。「重大事態」であることを認めた際、学校の設置者または学校は、事実関係を明確にするための調査を行うもの、といじめ防止対策推進法に定められている。文科省のガイドラインによれば、調査には時として1年以上を要する場合があるが、その際は適切に経過報告を行うことが求められているという。
東京都杉並区で、2013年のいじめ防対法施行後、初めて重大事態認定された事案がある。2022年5月に東京都杉並区の公立小学校で起きたものだ。被害児童の母親の職業は弁護士。スムーズな経過を見せるかと思いきや、調査は発生から3年9カ月が経った今もいまだに終わる気配がなく、保護者にも経過報告がなされないまま。いじめ発生当時、2年生だった児童は4月で6年生に進級するが、いまだに登校ができていない。同区では現在までに、この事案を含め計11件の重大事態が発生したが、現在、2件しか調査が終わっていない。
この2022年のいじめ被害に遭った児童の母親から話を聞いた。いじめは当初、学校に見過ごされ、そして続いていた。校長がいじめだと認知したのは、発生から約1ヶ月後。母親から「いじめの定義にあたるのでは」と指摘を受けた後だった。
【前後編の前編】
【高橋ユキ/ノンフィクションライター】
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「6対1で殴られた」
2022年5月18日、杉並区の公立小学校の2年生だった男子、Aくんは、クラスメイトである6人の男子にタックルされ、鼻などを殴られた。女子が男子に腕を引っ張られているのを見かけ、これを止めに入ったことから暴力を受けたのだった。こうした出来事が起きれば、通常は学校から保護者にすぐさま報告があるはずである。ところが、そのような報告はないまま、これを母親が知ったのは学童にAくんを迎えに行ったときのことだった。Aくんはこう切り出した。
「ママ、6対1で人殴るってどう思う?」
「6対1でもやり返さなかったら、それは勝ち?」
母親は答えた。
「それは勝ちでしょ。英雄でしょ」
すると、ようやくAくんは母親に打ち明けたのだった。
「僕、6対1で殴られた」
翌朝、Aくんの登校に付き添った父親が校長に報告したことで、学校は6児童による殴打行為を初めて知ることになる。ところがこの時、校長はこれを「いじめ」とは認識できないまま、担任とともにその場限りの対応に終始し、いじめは続いていった。
明日、学校に行かない
同年5月24日。母親が学童に迎えに行くと、Aくんが暗い顔をして出てきた。長い沈黙のあと、こう告げた。
「明日、学校に行かない」
驚いた母親が話を聞くと、今度は“体育の準備の時間に、2人のクラスメイトの男子から腹を殴られた”とAくんが報告した。殴られた直後、うずくまっているAくんを、校長は見ている。にもかかわらず、校長からAくんに聞き取りはなく、学校から保護者への報告はなされなかった。これを母親が知ったのはまたもや学童の迎えのとき、Aくんの口から聞いたことによる。
「行かない」と宣言したが、Aくんの学校では翌日、周年記念の航空写真撮影が予定されていた。これまでは母親か父親のどちらかがAくんの登校に付き添っていたが、25日は両親で付き添い登校した。ところがこの日もAくんは、クラスメイトから暴力を受ける。
Aくんの学校は2年生が1学年1クラスであり、また当時、クラスは荒れていた。授業中に席を立ち徘徊する生徒が複数いたという。加えて、本来の担任が産休のため、その前日……つまり5月24日から産休代替の教師がクラスを担当していた。
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