中国軍「制服組トップ」が失脚で「習近平」“台湾侵攻”と“終身支配”の野望は叶うか 7人で発足した「中央軍事委員会」は“粛清の嵐”で2人だけに
中国が揺れている──。表面上は平穏に見えるかもしれないが、水面下では激しい権力闘争が繰り広げられている。中国国営の通信社・新華社は1月24日、張又侠(ちょう・ゆうきょう)氏が「重大な紀律・法律違反の疑いで立件し、審査・調査を行うことが決まった」との記事を配信。すると翌25日、朝日新聞、読売新聞、NHKなど日本の主要メディアが一斉に張氏が「失脚」したと報じた。
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【写真を見る】習近平国家主席とは親子2代にわたる“盟友”とされてきた制服組トップ「張又侠氏」。鋭い眼光が印象的な“粛清”される前の表情。
中国情勢に明るくない多くの日本人にとって、張氏の知名度は決して高くないだろう。では、なぜ日本の大手メディアがこぞって記事を作成したのか、担当記者が言う。
「張氏は1950年生まれの75歳で、68年に人民解放軍に入隊しました。実は習近平国家主席の父親と張氏の父親は同郷で、共に中国共産党の同士として国共内戦を戦った“親友”だったのです。子供たちの代も結びつきは強く、張氏が2007年に中将に昇進すると、習氏は08年に国家副主席に抜擢されました。この頃から習氏は張氏を積極的に重用するようになります。習氏が13年に国家主席に就任し、張氏は17年に中央軍事委員会副主席、つまり制服組のトップに選出されたのです」
ここで確認しておきたいのは、中国の国営メディアは張氏が「立件」されたと報じたが、日本やアメリカなどのメディアは「失脚」と伝えたことだ。つまり張氏が重大な規律・法律違反を犯したというより、習氏との権力闘争に敗れた可能性を示唆している。
「実は最近の中国では権力闘争という言葉では言い表せないほどの異常事態が続いています。中国共産党が人民解放軍を統括・指導する最高意思決定機関『中央軍事委員会』は2022年、習氏を含めて7人の体制でスタートしました。ところが委員は相次いで姿を消していったのです。なぜ委員は表舞台に立てなくなったのか、それは汚職摘発運動の結果だというのが公式見解です。しかし、汚職摘発は“粛清”の口実だと指摘する専門家も少なくありません」(同・記者)
「習氏の私兵」となった解放軍
失脚したのは張氏だけでなく、中央軍委連合参謀部参謀長を務める劉振立(りゅう・しんりつ)氏も「立件」されている。この結果、中央軍事委員会は習氏と張昇民(ちょう・しょうみん)氏の2人だけになってしまった。
いや、2人のうち1人は習氏だから、「たった1人だけ、張昇民氏が生き残った」と見るべきなのかもしれない。
この“粛清の嵐”がどれほど日本にとって恐ろしいのか、時事通信が1月25日に配信した「『個人の軍隊』へ大転換 習氏が直接指揮も─中国」の記事を読めば一目瞭然だろう。
「時事通信は、7人の委員が2人になってしまったことを『習氏が中央軍事委員会を《解体》した』と表現しました。本来、人民解放軍は“共産党の軍隊”であるはずですが、時事通信は今回の粛清で“個人の軍隊”に変わったと指摘。通信社の記事ですから“個人の軍隊”と中立的な表現を選びましたが、要するに解放軍が習氏の“私兵”になったということでしょう。実際、記事には《台湾侵攻作戦を習氏が直接指揮する可能性もある》という衝撃的な一文もあります。もともと習氏にとって台湾統一は悲願であり、そのためには軍事侵攻も辞さないと公言しています」(同・記者)
田中三郎氏は中国軍事問題の研究家として知られる。防衛大学校から陸上自衛隊に進み、一貫して中国人民解放軍の調査、研究を積み重ねてきた。中国の専門家だけあり、自衛隊から外務省に出向した経験も持つ。
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