サザエさんは「アガサ・クリスティ」の愛読者、NYタイムズが1面で報じた「ポワロ死す」…没後50年で振り返る「ミステリーの女王」秘話

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終活もぬかりなく

 失踪事件の翌々年には離婚が成立し、その2年後には14才年下の若き考古学者と再婚し、幸せに暮らしたクリスティ。鬼籍に入ったのは、既に触れたポアロの死が一面で報じられた、その約半年後だった。つまり、ポアロの後を追うようにクリスティは永眠したわけである。

 そして、彼女の金庫を開けると、驚きの紙束が出て来た。なんと、未発表の作品が出て来たのである。それも、ポアロと並ぶ人気者、ミス・マープルが登場するミステリーだった(『スリーピング・マーダー』1976年)。

 詳細を明かすと、これはクリスティが予め準備していたものだった。自分が死んだ後、家族が困らないように、未発表作品を残し、事前に契約を何度も詰め、その印税を受け取れるようにしたのである。書かれたのは逝去する30年以上前の、1943年前後であった。第2次世界大戦の戦火が厳しくなっていたことも、その背景にあった。

 そして、ポアロの最終作である件の『カーテン』も、実は同じ理由で同時期に書かれたものであった。しかしながらこちらは出版社に急かされる形で、クリスティが生前の出版を許諾。ポアロが最後の事件で死ぬことをクリスティは仄めかしており、ネタバレの一面記事となったのだった。なお、生前の取り決めにより、『スリーピング・マーダー』の印税は夫に、『カーテン』の印税は娘に与えられている。

 最後に歴史的な傑作である『そして誰もいなくなった』に関するトリビアを。孤島に集められた10人の男女が次々に殺され、最後は誰もいなくなる(死亡する)というショッキングな話だが、実はクリスティ自身の作による1943年の同名の舞台劇では、違うラストになっている。ある2人が生き残る結末となっているのだ。この180度近い変更について、クリスティ自身は、こう言い残したと伝えられる。

「皆さんの楽しい夜を、台無しにしたくはないですから」

 同作での結末は、危難を乗り越え生き残った2人が結ばれるという、ハッピーエンドとなっている。

※1=2013年6月8日の同紙朝刊で発表。回答者は1026人。なお5位は江戸川乱歩。

※2=テレビ朝日は2017年3月25,26日に2夜連続で、「そして誰もいなくなった」、2018年3月24日に「パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~」、翌3月25日に「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」、2019年4月14日に「ドラマスペシャル アガサ・クリスティ 予告殺人」を放映。フジテレビは三谷幸喜脚本で、2015年1月11日、12日に2夜連続で「オリエント急行殺人事件」、2018年4月14日に「黒井戸殺し」、2021年3月6日に「死との約束」を放映している。

※3=他にテッド・ニール説、ナンシー・ニール説あり。

瑞 佐富郎
愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。「デイリー新潮」でもおなじみ、プロレス&格闘技ライターとしての活動が中心で、著者も多数上梓しているが、元々は大島渚の片腕として知られた脚本家・田村孟に師事しており、映画、文学への造詣も極めて深い。ミステリー関連としては2025年8月16日、刑事コロンボについてのコラムを「デイリー新潮」に寄稿。クリスティ作品で好きなのは『五匹の子豚』(1942年)。

デイリー新潮編集部

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