中村勘三郎さんが“3人目のせがれ”と呼んだ「中村鶴松」の逮捕劇…映画「国宝」に重なる“部屋子”という複雑な世界

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 またも、歌舞伎役者の“泥酔事件”である。

「新春浅草歌舞伎」(1月2~26日、浅草公会堂)に出演中の中村鶴松(30)が、18日未明、泥酔して飲食店のドアを蹴破り、警視庁蔵前署に建造物損壊の疑いで現行犯逮捕されたのだ。

 本人は翌日に釈放されたが、以後の出演は降板となり、急きょ代役を立てて、何とか公演自体は続けられた。

 彼は、2月に幹部昇進し、〈中村舞鶴(まいづる)〉の襲名が決まっていた。名優・十七代目中村勘三郎の俳名〈中村舞鶴(ぶかく)〉にちなんだ芸名だ。だが、歌舞伎座での襲名披露公演「雨乞狐」は降板が決定。演目はそのままで、中村勘九郎と七之助が代役に立つ。

 もちろん襲名披露も見おくりとなった。そのほか、3月の中村屋一座の巡業「春暁歌舞伎特別公演2026」も降板。所属事務所は、「当面の間、謹慎する」旨を発表した。

 歌舞伎ファン、中村屋のファンにとって〈中村鶴松〉といえば周知の若手人気役者だが、ご存じない方もいるだろう。簡単にご紹介しておこう。

 中村鶴松(本名:清水大希)は、1995年生まれ。芸能とは無縁の、一般家庭の出身である。幼少期より児童劇団に所属し、2000年5月、5歳の時にオーディションを経て、歌舞伎座の「源氏物語」に、〈茜の上弟・竹麿〉役で、本名で出演した。これが初舞台である。ちなみにこの公演の座頭は、七代目市川新之助=現在の市川團十郎白猿だった。

 その後も、「実盛物語」の〈太郎吉〉や、「義経千本櫻」の〈お安実は安徳帝〉といった、“子役の大役”を次々つとめた。この時期に、すでにその才覚を見抜いていたファンも多い。そのなかには、いまでも本名にちなんで〈大ちゃん〉の愛称で呼ぶひともいる。

 最初期の〈大ちゃん〉を育てたのは、子役指導の大ベテラン、音羽菊七さんだった。2000人以上の子役を育てた名指導者で、片岡愛之助、澤村精四郎といった一般家庭出身の子役は、ほとんどこの菊七さんの指導を受けている。台本は与えず、セリフを口移しで教え、ノートに書かせる厳しい指導で知られた。〈大ちゃん〉は、そんな菊七さんの徹底指導で育ったのである。やがて、オーディションなしで、指名されての子役出演が続くようになった。

 そんな〈大ちゃん〉の才能に早くから注目しているひとがいた。五代目中村勘九郎(当時)である。2003年8月の歌舞伎座「野田版 鼠小僧」で〈孫さん太〉を見事に演じたのがきっかけで、部屋子に迎えることになった。

 菊七さんは、2005年3月に60歳の若さで没するが、その2か月後の2005年5月、十八代目中村勘三郎襲名披露公演で、〈中村鶴松〉を襲名する。正式に部屋子披露され、「髪結新三」の〈丁稚長松〉などを演じた。

 そもそも、堂々と「部屋子披露」と銘打たれること自体、勘三郎が、いかにこの少年に目をかけていたかがうかがわれる。現に勘三郎は、しばしば鶴松を「3人目のせがれ」と呼び、TVの密着番組などでも積極的に紹介していたのだ。

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