いまだに絶えない「エウリアン」による被害…高額な商品を売りつける“絵画商法”を撲滅できない“絵画ならではの理由”

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 都内の繁華街などにギャラリーを構え、訪れた人を言葉巧みに勧誘し、ローンを組ませて高額な絵画を購入させる――。いわゆる“絵画商法”の強引な販売手口はたびたび問題視されてきた。近年も絵画商法による“被害”は続いているようで、ネット上では“エウリ(絵売り)アン”などと呼ばれ、主に若者を狙って押し売りする業者が後を絶たないという。【文・取材=山内貴範】

アニメやゲームのイラストを使った版画

 バブル期には絵画の売買が大いに盛り上がった。デパートや美術商などが中心となって、日本画家や海外のアーティストの“版画”を乱売した。版画はいわゆる一点物の絵と違い、量産することができるのがメリットである。日本画家や洋画家、さらに海外のアーティストも加わって、巨大な市場を形成した。

 しかし、本来の価値をはるかに上回る額で販売し、大量に出回ったこともあって、バブル崩壊後には価値が大暴落。投機目的で購入した人は巨額の損失を被ることになった。美術市場全体が冷え込み、日本人の絵画離れを進めてしまった要因の一つともいわれる。

 その後、2000年代に増加したのが、いわゆるオタク層をターゲットにした、アニメやゲームの美少女イラストの版画を売る業者である。この頃から、ネット上でも絵画商法がクローズアップされるようになった。それらの価格は安いものでも30万円を超え、50万円超えも珍しくなかった。強引にローンを組まされたと、2ちゃんねるなどの匿名掲示板で“被害”を訴えるようになり、勧誘の実態をブログでレポートする人も現れた。

 絵画商法は、美術に無知な層を狙った悪徳商法や詐欺の一種といわれ、原価がかかってないものを高額で売っているという理由で社会問題として扱われる。“洗脳された”などと被害を訴える人も相次ぐにもかかわらず、なぜ撲滅が難しいのだろうか。それは、絵という商材がもつ特性にあるのだ。

買ったときより価値が上がっている例も

 絵は貴金属と違って原価が限りなく安い。そのうえ、1円でも要らないという人もいれば、100万円払ってでも欲しい人もいるという、極端に価値観が分かれる商材である。世界的な巨匠・ゴッホの絵画は生前、ほとんど売れなかったという逸話をご存じの方は多いはずだ。価値を見出されなければ1円にもならず、反対に、どんなに高い金額で買ったとしても、本人が納得して気に入っていればそれでいいのだ。

 もちろん、絵画商法の被害例として挙げられる「アンケート調査だと聞かされて同行したら絵画のセールスが始まった」「強引なセールストークで法外な価格の絵画を売りつけられた」「契約しないと5時間も6時間も説得された」といった強引な手口には大いに問題がある。だが、原価と大幅に乖離しているからといって、絵画の場合、一概に“詐欺”とは言い切れないのも事実だ。その意味で絵画商法は、“絵画の価値は一律に決めることができない”という点を巧妙に利用しているともいえるだろう。

 絵画商法で販売された絵を二次流通市場に売りに出すと、極端に値段が下がる。例えば、ある美少女ゲームの作家の版画は、購入時には30万円以上したが、アニメの中古ショップに持ち込んだところ、提示された買い取り値は5000円~1万円だった、というケースが少なくない。そのため、以前からネットでは「ぼったくりではないか」という議論がなされている。

 しかし、美術市場を見渡せば、ほとんどの作家は二次流通で値段が下がるのが普通であり、これは絵画商法で売られる絵に限った話ではない。その一方で、作家の人気が出て、絵画商法で売りつけられたときより高騰している絵も存在しており、転売すれば儲かってしまうケースもあるにはあるのだ。

 ちなみに、現代美術作家の草間彌生や奈良美智の版画もかつては数万円で買えた時期がある。その頃は、「サイン以外はプリント」「版画は価値が低い」と否定的な声も聞かれたものだった。しかし、今やそれらがオークションに出ると数百万円で落札されるのが普通で、百貨店のギャラリーでも仰々しく扱われている。

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