報道機関の記事をリポストしただけで違法行為に? ペットショップ「クーアンドリク」委託コンサルタントから訴えられた杉本彩さんが勝訴 紀藤正樹弁護士が解説

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新潮社も全部勝訴

 A子さんは2つの裁判で「自分は店舗責任者ではなかった」として、記事を配信した新潮社と記事を拡散させた杉本さんに「社会的評価を低下させられた」と訴えた。

 結果から報告すると、新潮社は昨年4月に一審、11月に二審と全部勝訴。A子さんは上告せず、記事に公共性・公益目的があり、大部分において真実性があると裁判所が認定した判決が確定した。杉本さんの裁判は新潮社に比べると遅れていたが、12月23日に東京地裁は原告の訴えを棄却。A子さんは控訴せず、今年1月9日、一審判決が確定した。

 デイリー新潮にとって、杉本さんが訴訟に巻き込まれたことは想定外だった。動物愛護活動で知られる「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」の理事長を務める杉本さんは、クーアンドリク連載に大きな関心を寄せ、当該記事には登場していないが、ほかの回ではコメントを寄せてくれた「取材源」の一人だった。連載自体を杉本さんが拡散してくれたおかげで、多くの動物愛護家からの賛同コメントもつき、取材班はとても励みになった。

問題視すべきはデマの拡散行為

 杉本さんの代理人を務めた紀藤正樹弁護士は「A子さんが意図していなかったとしても、結果から見るとスラップ(恫喝)的な訴訟だった」と話す。

「元となっているのは同じ記事なので、A子さんは新潮社だけを訴えるべきで、百歩譲っても両者をまとめて訴えるべきだった。取材者と取材源を分断させる訴訟になってしまうと、取材源は費用・時間・労力を費やさなければならなくなり大変です。結果から考えても、訴える側は杉本さんへの提訴を自制すべきだった」

 紀藤氏はこの点において裁判所の理解も足りていないと考えている。

「両者の事件の実態は同じなのだから、裁判所には2つの裁判を併合するよう繰り返し求めましたが、最後まで認められませんでした。新潮社の裁判で記事が真実と認められれば、杉本さんのリポスト行為も名誉毀損には当たらないわけだから、杉本さんの裁判は新潮社の裁判結果を待っていたところもある。杉本さんの負担を考えて、併合事件にすべきだった」

 紀藤氏は、勝訴できたものの、裁判所が杉本さんのリポスト行為について、著名な芸能人であったことなどを理由に「原告の社会的評価の低下を拡大させたものと認めるのが相当」と判断した点については納得できないと語る。

「結果として、記事内容が真実だったから違法性がないと認めてもらえましたが、この文章はどうしても気になってしまう。こういう認定が定着してしまうと、人々はXで記事への賛同が示しづらくなる」

 確かに、多くのXのユーザーが読んで関心を持った記事を何気ない気持ちで記事をリポストしているが、その一つひとつの行為が、記事内で出てくる人に対して「社会的評価の低下を拡大させた」とみなされたら大変だ。

「今回、杉本さんはデイリー新潮の取材源であったため、協力を得て記事の真実性を証明できましたが、一般市民はほぼ不可能です。そういう意味で今回の判決は判例集に載るくらい重要な意味を持っている。本来、リポストで問題視すべきは明らかなデマの拡散行為であるべきで、報道機関のリポストで一般市民が訴えられ、真実性を証明できず、敗訴するようなことになってはいけない。まだこの分野についてはルールが明確化していないので、今後判例を積み重ね収斂させていく必要があります」

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