故人はなぜ彼の参列を望んだ…? 推し活仲間のオンライン葬儀で20代女性が見た異様な光景【川奈まり子の百物語】

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誤配信

 B氏もおかしなものを見てしまったのでは、と、佳苗さんは期待した。

 だが、B氏の話は予想外のものだった。

「他所の葬式の生中継に接続されてしまって、慌てて切って、入り直したんですよ。そちらは問題ありませんでしたか?」

 佳苗さんは咄嗟に答えに詰まった。

 人間の形をした黒い影がいくつもウヨウヨして、死んだはずのA子の声で挨拶をしたなどと話せば、どんな誤解を受けたものかわからない……。

 困っていたら、B氏は続けてこう問いかけてきた。

「一瞬、立派な祭壇が映ったでしょう?」

「え……と、はい」と、佳苗さんは、さっき見たばかりの質素きわまる祭壇を思い浮かべながら答えた。

「たぶん同じ葬儀社が同時に手掛けていた別のオンライン葬儀の画像でしょう。すぐに画面が切り替わりましたが、他人の葬式を配信してしまうなんて、ひどいミスだ!」

 こうB氏は腹に据えかねた口調で言ったかと思うと、「それにしても……」と呟いて急に黙り込んだ。

 あまりに沈黙が長いので「どうされました?」と佳苗さんは訊ねた。

 「あ! いえ、誰の葬式だったのだろうと思いまして。0コンマ何秒かで正しい葬儀会場に画面が変わったので、故人の名前を確認できませんでしたし、遺影もしっかりとは見れなかったのですが……。遺影に写っていた人は私ぐらいの年齢の男性で、面差しも私に似ていたような気がするんですよ。単に気のせいでしょうけど……」

幻の葬儀

 B氏との通話を終えて間もなく、A子の妹から、Wi-Fiかデバイスの不具合が原因でライブ中継の一部を見逃した人がいたため動画を1週間残す旨を伝えるEメールが届いた。

 そこで佳苗さんは再びA子のオンライン葬儀の配信動画を視聴してみることにした。

 再び怪しい黒い影を目にする可能性があるからこそ、確かめずにはいられなかったのだ。A子の声がおかしな弔辞の挨拶をしたことも時間が経つほどに現実感が薄らいで感じられてきたので、あれが本当の出来事だったのかを知るためにも、視聴しておきたかったのだとか……。

 だから彼女は動画配信サイトの閲覧履歴から手早くA子のオンライン葬儀動画に繋がろうとしたのだが、そこでさっそく意表を突かれてしまったのであった。

 サムネイルと待機画面は、白地に落ち着いた色調で描かれた雲の文様と花々のイラストの静止画像だった。

 アニメキャラのイラストではなく、BGMも推していた声優の曲ではなかった。

 厳かな調べのインストゥルメンタルが流れる中、画面中央にA子の遺影と《故〇〇A子様 葬儀式場》という文字が静かに浮かびあがり、音楽がフェードアウトすると同時に葬儀の中継画面に切り替わったのである。

 黒い影たちはどこにも見当たらず、最後まで不審な点を発見できないまま終了した。

 何度見ても同じことで、佳苗さんは次第に、親友が死んだショックのあまり幻を見てしまったのだと思い込むようになっていった。

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