ダイエット効果に美肌作用も… 「梅干し」の知られざるポテンシャル
塩分の“真相”
梅干しの持つさまざまな効能、機能性について説明する前に、まずは「しょっぱさ」にまつわる誤解を解いておきたいと思います。
たしかに梅干しはしょっぱい。でも、みなさん、梅干しを1日何個くらい食べますか? いくら好きな人でも5個も6個も食べるという人はほとんどいないと思います。おにぎりの具、あるいは日の丸弁当として、食べたとしても1日1個程度で、それ以上食べることはないという人が多いのではないでしょうか。
では、梅干し1個に含まれる塩分は果たしてどれくらいかと言うと、現在、塩分3%程度の減塩タイプのものが多く販売されていて、その場合、単純計算で7個入り70グラムだと1個は10グラムなので塩分は0.3グラム。減塩タイプでない一般的な梅干しでも、塩分は8%前後なので0.8グラム程度です。なお、10グラムには当然「種」の重量も含まれるため、実際には塩分量はさらに少なくなると考えられます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取量基準(2025年版)」では、成人男性の1日の塩分摂取量は7.5グラム未満、女性は6.5グラム未満が推奨されています。梅干し“だけ”で塩分過多になることはまずないことがお分かりいただけると思います。「バランスのよい食事」とよく言われますが、塩分に関しても、梅干しはしょっぱくて塩分の摂り過ぎを招くから避ける、というのではなく、三食の食事のトータルメニューで考えるべきなのです。
梅ならではの血圧上昇抑制効果
「梅干しと塩分」について理解していただいた上で、次は「梅干しと高血圧」について解説したいと思います。
梅干しだけで塩分の摂り過ぎになる心配をする必要はないと言われても、どうしても「しょっぱさ=高血圧の引き金」というイメージに囚(とら)われてしまう人もいるかもしれません。しかし、私たちと米国テンプル大学などとの共同研究では、梅干しが血圧の上昇を防ぐという驚きの結果が明らかになっています。
血圧の上昇には「アンジオテンシンII」というホルモンの働きが大きく関わっています。そこで私たちは、ラットの培養細胞に梅肉エキスとアンジオテンシンIIを加えてみたところ、アンジオテンシンIIの働きが80~90%も抑制されたのです。なお、梅と同様にすっぱい、他の果実のエキスではどうなるのか実験したものの、レモン、オレンジ等ではアンジオテンシンIIの働きを抑える効果は認められませんでした。つまり、梅肉エキスに含まれるある成分、あるいは複数の成分の複合的要因による、梅ならではの血圧上昇抑制効果が存在すると考えられるのです。
また、マウスにおいて、普通の水と、梅肉エキス入りの水を与えるグループに分けて飼育すると、前者では血圧が徐々に上がったのに対し、後者では血圧が正常値に保たれると同時に、血管障害や心臓肥大といった高血圧の代表的な合併症も防げることが明らかになりました。ちなみに、この研究結果をまとめた論文は2023年、日本高血圧学会の学会誌に掲載され、関心を集めました。
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