高市総理の巨額補正予算では「物価高」はさらに悪化する…見過ごせない3つの理由

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危ないと判断されてしまえばおしまい

 3つ目は2つ目と重なるが、政策に自信があっても、市場に「ダメ」の烙印を押されればおしまいだという点である。今回の補正予算でも、前述のように11兆円を大きく超える赤字国債が発行され、国の借金はまた増える。日本はその負担に耐えられるのか。

 高市総理も彼女に近いエコノミストたちも、次のように主張する。政府保有の金融資産を差し引いた純債務を見れば、日本は他国とくらべて悪い状況ではない。名目経済成長率が長期金利を上回っているかぎり、対GDPでの債務比率は下がっていく――。だが、そうした主張が仮に正しいとしても、「日本の財政は危ない」と市場が判断すれば円は売られる。つまり問題は、本当に危ないかどうかではなく、危ないと判断されてしまうことにある。

 日本は借金が多すぎて、利上げが財政負担増に直結する。事実、そのために機動的な利上げができず、そのことは市場にバレている。要は、黙っていても円は売られやすいのだ。そこに、利上げに消極的な高市氏が自民党総裁に選ばれたので、円は一気に売られた。続いて総合経済対策が発表され、財政拡張路線が改めて明らかになると、今度は長期金利が上昇。その指標とされる新発10年国債の利回りは、18年半ぶりの水準にまで上昇して、2%を伺おうとしている。

 財政を慮って利上げを躊躇するうちに、長期金利が勝手に上がって財政負担が増し、なおかつ財政規律への懸念から、円安が止まらなくなった、ということである。

 話は少々ややこしいが、丸めていえば、高市総理の経済対策が金融市場から不安視された結果、長期金利が急上昇し、日本の利払い費が膨らもうとしている、ということだ。こうなると国の借金がさらに増えるという懸念が生じて、円はさらに売られかねない。少なくとも、長期金利の急上昇と円安は、金融市場からの厳しい視線の現れであり、そういう目を向けられた時点で、筆者は不安しかいだけない。

 せめて政権内で賛否両論を戦わせてほしいが、総理の経済に関する諮問機関である経済財政諮問会議も日本成長戦略会議も、アベノミクスを肯定するリフレ派(デフレから脱却して適度なインフレを目指すのがリフレ政策)に占拠されてしまった。すなわち、これらの会議では反対意見が出ない仕組みなのである。異なる意見に耳を傾けて自説を常に検証する、という謙虚さを失ったとき、人間は暴走することがある、と指摘しておきたい。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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