高市総理の巨額補正予算では「物価高」はさらに悪化する…見過ごせない3つの理由
このインフレ下になぜデフレ脱却策なのか
2025年12月16日、一般会計の総額が18兆3,034億円にも上る2025年度補正予算が、参議院で可決されて成立した。コロナ禍後の最大規模で、6割を超える11兆6,960億円は赤字国債でまかなわれる。この予算は高市早苗総理の肝いりである総合経済対策の裏づけとなるもので、財政規律が失われるという批判を避けるために、「責任ある積極財政」なる言葉がもちいられている。
【写真7枚】まるで別人のよう… 「高市早苗首相」32年前の“意外すぎるファッション”
周知のとおり、高市総理は安倍晋三元総理が進めた「アベノミクス」を信奉し、その路線を継承しようとしている。つまり、積極的な財政出動や徹底した金融緩和というアベノミクスの流れを汲み、需要を創出してデフレからの脱却をめざし、日本が稼ぐ力を高めるのだという。そうなれば税収も増え、財政も持続可能になるという理屈である。
要は、需要を創り出して賃金を上昇させ、設備投資が続々と行われるという経済の好循環を生み出すために、政府が積極的に支出するのが高市流で、そこに向けて動き出したのだ。
しかし、なぜいまアベノミクスを継承するのか。というのも、アベノミクスがはじまった2012年12月の時点と現在とでは、経済状況がまったく異なる。当時は1990年代からはじまった景気の長期停滞と物価の下落に見舞われていた。このため、デフレからの脱却を旗印に金融緩和や財政出動を行うのは、その是非はともかく、理屈が通らないわけではなかった。
ところが、目下の経済状況はもはやデフレではない。むしろ、アベノミクスがはじまった当時とは正反対といえる。それは物価高にあえぐ国民が一番よく知っているはずで、日本のインフレ率はすでに2025年10月時点で3%に達している。それなのに大型の財政出動をすれば、需要が刺激され、物価はさらに上がってしまう危険性が高い。
また、インフレになれば金融を引き締めるのが経済の定石なのに、高市総理は緩和策にこだわり続けている。するとどうなるか。
現在の物価高はその過半が円安に起因し、円安の大きな原因は、日本と欧米との金利差が大きいことにある。つまり、金利が低い円より金利が高いドルやユーロで運用したほうが儲かるから、円が売られてしまう。緩和策をとるかぎり円安になり、物価高も続くということだ。そのうえ金利はゼロに近いため、銀行などに預けている資産はどんどん目減りする。国民は貧しくなるばかりである。
給料が上がらなかった「実績」があるのに
このように、高市政権の経済対策に対しては、考えるほど不安が募る。なかでも心配になる3点について、以下に整理しておきたい。1つは、これまで財政出動と金融緩和をいくら重ねても、私たちの賃金上昇につながらなかったという点である。
アベノミクスの開始直前は、1ドル80円前後の超円高で、たしかに日本の輸出産業は圧迫されていた。そこで、産業界の要請に応えて異次元緩和と財政出動が開始されると、円安は進み、輸出企業を中心に大企業の利益は増え、商社にせよ大手製造業にせよ、多くが史上最高益を上げるに至った。円安のせいで物価高になれば、企業のコストも上昇するが、各企業はそれを価格に転嫁した。つまりツケを消費者に回したわけで、結果、物価はさらに上がった。
物価が3%上昇するのは、消費者にとっては、消費税が3%上がったのと同じことだ。アベノミクスはこうして消費者に負担を強い、大企業を助けたことになる。それでも物価が上がった分、賃金も上昇するなど消費者への還元があれば、緩和政策の効果もあったといえよう。ところが、各企業は円安のおかげで楽に利益を上げられるので、技術革新を怠った。このため経済は成長しなかった。さらに許しがたいことに、増えた利益を分配しなかった。つまり、利益を自己資本の強化に回すばかりで、社員の給料を上げなかったのである。
企業の内部留保は、1998年には130兆円程度だったが、アベノミクスがはじまったころに300兆円に達した。だが、本格的に増えたのはその後で、2024年末現在で637兆円超に達している。
バブル崩壊以降、企業がベアを凍結して賃金が上がらなくなったため、アベノミクスが風穴を開け、賃金の上昇を促すはずだった。ところが、大企業は非正規雇用を増やし、正社員のベアは凍結した。次に襲うかもしれない危機に備えるため、内部留保を増やして自己資本を強化するのが産業界の常識になった。結果的に日本は、過去30年にわたって実質賃金がほとんど増えないという、先進国としては過去に例がない事態に見舞われている。
それがアベノミクスの結果なのだから、賃金を上昇させるなら、企業を甘やかす政策は改めるしかないと思うのだが。
[1/3ページ]


