知ると楽しめる「ばけばけ」 ドラマと史実の違い “なれそめ”“出生の秘密”そして“歯”
女中なのかラシャメンなのか
NHK連続テレビ小説は、歴史上の人物をモデルにしていても、歴史ドラマではないので、描かれる内容の史実との違いを問うべきものではない。とはいえ、モデルになった実話とドラマの描写がどう違うのか、知っていても損はないし、知ってこそ興味が沸くこともあると思う。
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そこで『ばけばけ』の主人公の松野トキ(高石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の物語が、モデルになった小泉セツとラフカディオ・ハーンの逸話とどのように違うのか、とくに目立った差異について記してみたい。
トキがモデルのセツともっとも違うのは、ヘブンの女中として働きはじめた時期と、働き方である。
『ばけばけ』では、ヘブンが滞在していた花田旅館を出て近くの一軒家を借り、身の回りの世話をしてくれる女中を雇いたいと希望した時期は、ドラマ中に明示されてはいないが、明治23年(1890)の秋ごろだと思われる。実在のハーンが花田旅館のモデルの富田旅館を出て、宍道湖畔の借家に住みはじめたのは11月中旬ごろで、ドラマではトキが女中になったのは、その直後という設定なのだろう。実際、寒い冬が訪れるのも、正月を迎えるのも、ドラマでは少し先のことだった。
松江中学でヘブンの同僚である錦織友一(吉沢亮)は、ヘブンが士族の娘を希望するので、トキに白羽の矢を立て、トキも一度は断りながら、物乞いに転落していた実母の雨清水タエ(北川景子)を救うため、覚悟を決めて引き受けた。その時点では、トキは事実上のラシャメン、すなわち西洋人の妾になるものと思っていたが、ヘブンが求めていたのは妾ではなかったことが、第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」(2025年11月10日~14日放送、以下放送日に関しては2025年のもの)でわかった。
トキが妾になったと疑った両親や祖父が、ハーンの家に踏み込むと、ハーンは「私のことをそんな男だと思っていたのか、ふざけるな!」と怒鳴った。第8週「クビノ、カワ、イチマイ。」(11月17日~21日放送)でも、ハーンは周囲から「妾を囲っている」と見られるのを嫌がり、トキをクビにしようとした。このように『ばけばけ』では、トキはあくまでも単なる女中で、夜になると家に帰るのである。
だが、小泉セツの働き方も、働きはじめた時期も、ドラマとは違った。
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