娘が連れてきた婚約者が「まさか」 罪の連鎖? 神のいたずら? 52歳父が凍りついた“再会”

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娘に会うのを渋るように

 利弘さんが先に出て、ティールームを振り返ると、娘が彼の肩にもたれるように甘えていた。あんなしおらしい娘を見たことはなかった。娘が本当に彼を愛しているなら、一緒にさせてもいいのかもしれないと思いつつ、自分が心の痛みと重さに耐えきれるだろうかと不安も募った。妻の麻美さんはなにも知らないままなのだ。年齢差だけでもショックを受けているのに、万が一、彼の素性を知ったらどうなるかわからない。

 表だって反対もできない。かといって賛成もできない。そうこうしているうちに彼が娘に会うのを渋るようになっていったらしい。

「娘が毎日、泣いている。食べ物もとらず痩せていく。焦りました。彼に連絡をとって、『娘は本気であなたを思っている。憔悴していく娘を見るのが忍びない』と伝えました。『腹を決めたほうがいい。あなたも僕も』と言うと、彼はわかりました、と。ただ、下の子が成人するまでは結婚という形はとらないということで話がまとまった。娘もそれは納得してくれた。麻美はしばらく寝込んだ時期もありましたが、今はなんとか立ち直っています」

いつか結香さんに会う日が来るのか

 娘は残りの大学生活を過ごしつつ、相変わらず彼と三日にあげず会っているようだ。ただ、「卒業したらとにかく結婚」という考えは、彼に諭されたのか少し変わった。彼の下の子が18歳になったら、子どもたちに交際を打ち明けるつもりらしい。そのとき結香さんにも夫の再婚が伝わるだろう。いつか利弘さんが結香さんに会う日が来るのかもしれない。麻美さんは何か気づくだろうか。

「結香に会うのは怖い。冷静になって現実を選択して別れたけど、未練がないわけではないんです……。本音を言うと、あと2年の間にふたりの関係が壊れればいいと思う。娘が彼を嫌いになってくれるのがいちばんいい。自分の年齢に見合った男性がもっといるはずなのに、どうして彼なんだと思いますよ」

 最後は嘆くように利弘さんは言った。そして大きくため息をつきながら、背を向けて歩き出した。どんなときも人は前を向いて歩いていくしかないのだとしみじみ感じさせられた。

 ***

 結果的に他人の家庭を壊してしまった利弘さんは、その因果応報ともいえる展開に直面することになった。仮に結香さんと再会することがあれば、彼女がこの状況を黙って受け入れてくれるかどうかは分からない。利弘さんと結香さんの出会いと関係の始まりについては、【記事前編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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