子どもを「理系」に育てるには「小学4年生」が分かれ道 プロ家庭教師が説く「計算力」だけではない「算数を学ぶ深い意義」とは

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「難問に立ち向かえる子ども」に育てるには

 そしてもう一つ、「幼児・小学生時代に育んでおきたい力がある」と西村氏。

「昨今の中学入試は問題文が非常に長くなっています。また、塾では習ったことのない初見の問題が出題されることもあります。こうした問題を前にしたとき、“塾で習っていないから解けない”と端から諦めてしまう子がいます。一方、同じ状況でも、“まずは問題文をしっかり読んでみよう。そこから何かヒントが得られるはずだ”と前へ進んでいける子もいる」

 両者の違いはどこから生まれるのだろうか。

「それは、“自分ならきっとできるはずだ”という自信があるかどうかです。この自信は、幼児期の家庭での過ごし方が大きな影響を与えます。幼少期に、遊びでも何かに夢中になって取り組んできた子は、自分で試行錯誤したり、創意工夫をしたりする経験をしています。そこで得た自信、もしくはそのときに親御さんからかけられたポジティブな言葉が、“自分ならきっとできるはず”という気持ちを生み出すのです」

 つまり、「親の関わり方次第で、どんな子でも理系の力を伸ばすことができる」ということだ。

 最後に西村氏はこう語る。

「理系の力を伸ばすために、昨今、幼い時から塾や算数系の習い事に通わせているご家庭が増えています。計算力を盤石にすることは大事ですが、それは理系の中ではほんの一部の力に過ぎません。もっと大きな枠で捉え、世の中の様々な現象や不思議に対して、原因や因果関係に興味関心が向くようにしてあげることの方が大切です。幼児・小学生のうちは何かのスペシャリストを目指すよりも、幅広く視野を広げてあげるといいでしょう。何にお子さんが興味を示すかは分かりません。子育ては“これをすればこうなる”といった単純な展開にはなりません。いくつかの偶然が重なって、自分が進みたい道に気づく。そうやって長い目で見てあげてください」

西村則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表。40年以上にわたり、難関中学・高校受験指導に携わる。これまでの合格実績は、灘中150人、開成中高150人、桜蔭中80人などの難関校をはじめ2500人以上。『「自走できる子」の育て方』(日経BP)、『理系が得意になる子の育て方』(WEDGE)など、著書・共著多数。

石渡真由美/ライター

デイリー新潮編集部

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