子どもを「理系」に育てるには「小学4年生」が分かれ道 プロ家庭教師が説く「計算力」だけではない「算数を学ぶ深い意義」とは
算数を得意にするには4年生の勉強習慣が重要
ところが、計算問題を解くのは得意だが、文章問題になるとお手上げという子がいる。例えば、「公園に鳩が5羽いました。そこにカラスが2羽やって来て、3羽逃げていきました。公園に鳩は何羽残っていますか?」といった問題が出ると、ぽかーんとしてしまうのだ。
「国語の読解力にも直結してきますが、そもそもこうした情景をイメージできない子が今とても多いです。そういう子は、幼いときから塾や学習系の習い事に通っていて計算力は鍛えられているのですが、遊びやお手伝いなどといった実体験が乏しいため、想像力に欠けてしまう。算数の単位理解が曖昧な子、図形が苦手な子も同じことが言えます」
そのような子の特徴として、「早く問題を解くことだけに気が向き、問題文をきちんと読もうとしない」と西村氏は指摘する。ひどいときには、「この問題は足すの?引くの?」と解き方だけを聞いてくる子もいるそうだ。こうした勉強の仕方をしている子は、中学受験ではいずれ大きくつまずくと西村氏は警鐘を鳴らす。
それでは、算数が得意になっていくのはどのような子どもなのだろうか。
「中学受験の勉強は、4年生からスタートするのが一般的です。4年生では、植木算やつるかめ算などの簡単な特殊算を学習します。授業では、なぜこの公式を使うかの説明はありますが、多くの子どもたちの関心は「どの公式で解くか」に向きがちです。すると、“こういう問題が出たときは、この公式を使えばいいのだ”と、パターン学習に陥りやすいのです。しかし、実際の入試では、塾で習った問題と同じ問題が出題されることはありません。どの学校でも少し角度を変えた問題を出します。なぜこの公式を使って解くのか、自分自身で納得感を得ながら知識や公式を定着させる勉強をしていないと、応用力が効かず、太刀打ちできなくなってしまうのです」。
つまり、ただやり方を覚える勉強と、自分の言葉で理屈を説明できるまで理解ができているかどうかの違いだ。「理系の素養がある子は、間違いなく後者」だと西村氏は断言する。
「中学受験の勉強に限らず、算数の勉強で早く答えを出すことに気持ちが向き過ぎていると感じたら、なぜその公式を使って解いたのかお子さんに聞いてみてください。特に算数の勉強が難しくなり始める4年生のうちに、その公式が使える条件や公式の意味を確認する習慣を付けておくことが大事です」
中学生になって、数学を学ぶようになっても同様だ。
「“なぜそうなるのか?”“他にやり方はないか?”など、根拠や因果関係に興味が向く子は、どんな問題を前にしても、まずは自分の頭と手を使って考えようとします。これは理系の勉強に限らず、生きていく上で欠かせない姿勢とも言えます。AI時代に求められるのは、<理系の人>ではなく、<物事を論理的に考える力を持っている人>です。これは理系・文系に関わらず、必要な力です」
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