福岡の炭坑町で生まれた「銘菓ひよ子」が“東京土産”と呼ばれる理由 誰もが知る「おみやげ」の知られざるウラ話

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「鳩サブレー」は「鳩三郎」?

 一方、地元ならではの意匠にこだわったのは「鳩サブレー」だ。神奈川の鎌倉に店を構える豊島屋が1897年ごろより製造・販売するサブレである。本店のすぐ近くにある鶴岡八幡宮の「八幡宮」と記された額の「八」の字が、2羽の鳩で形作られていることに初代店主の久保田久次郎が着目。「鳩をモチーフにしたお菓子を作りたい」と思っていた。そこに鎌倉の海濱院ホテル(当時は療養所)で静養していた外国人の客からジャンヌ・ダルクが大きく描かれた楕円形のビスケットを貰い、久保田はその美味しさに感動。同種のものを、鳩の形で作ることに着手する。試作品を海外渡航歴の多い船員に食して貰ったところ、「フランスで食べたサブレという菓子に似ている」との返答を得た。そこで「鳩サブレー」の誕生となった。

 ところが、この「サブレー」という呼称は発売当初、全く日本人に馴染みがなかった。実際、社内の人間や久保田自身も、親しみを込めて「鳩三郎」と呼んでいたという。そのせいか、売上も伸び悩んだ。しかし、新鮮なバターと卵にこだわった製法が徐々に評価を呼び、大正期には医師より「離乳期の幼児食に最適」のお墨付きをもらい、宮家からのご用命も受けるように。今ではそのシンプルで可愛らしい箱や包装のデザインも人気の有名土産となったのは、ご存じの通りである。

 因みに、芸能人ではみのもんたが贔屓にしていた手土産として有名だった。友人や、お世話になったマスコミ関係者に(しかも会社相手には数万円相当に及ぶほど大量に)送っていたため、近年、そちらが届かないことで、その体調を不安視する声が多かったのも事実だった(※2025年3月に永眠)。また、2010年4月、米国務省のスタインバーグ副長官が日本の総理大臣より鳩サブレーを贈られている。同職に就いていたのは、鳩山由紀夫だった。

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