年末年始に“劇場で観たい”おとなのための「海外映画」傑作ベスト3…見逃せない邦画もご紹介!

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「喝采」(マイケル・クリストファー監督、アメリカ、2024)

 最後にご紹介するのは、おとなのための新年第一弾、“大本命”作品である。これまた最近多い、認知症患者を題材にした映画なのだが、ここでの患者は、ブロードウェイの大舞台女優である。

「大女優、リリアン・ホールは、新演出で話題沸騰の舞台の初演を控えています。ところが、稽古中、なぜかセリフを忘れてしまう。不審に思ったプロデューサーは、彼女の降板・代役を検討しはじめます」

 検査の結果、かなり進行している認知症であることが判明する(この検査のシーンが、なかなかリアル)。舞台など、とても無理。それでも演劇一筋で生きてきた彼女は、なんとか本番を乗り切ろうと必死だ。その姿を見て、長年、付き添って来たアシスタントのイーディスは、ある“妙案”を思いつくのだが……。

「実はこの物語は、半ば実話なんです。モデルになったのは、2014年に86歳で亡くなった大女優、マリアン・セルデスです。彼女は、日本でもしばしば上演される名作スリラー劇『デス・トラップ』のブロードウェイ公演1809回にすべて出演し、ギネスブックで“世界で最も耐久性のある女優”に認定されています。そんな彼女でしたが、後年は、認知症に苦しんだ。今回、脚本を書いたエリザベス・セルデス・アナコーンは、彼女の姪。さらに監督のマイケル・クリストファーは舞台俳優でもあり、彼女と共演もしています。それだけに、物語自体がとてもリアルです」

 しかし、単なる“実話”ものとちがうのは、リリアンが、病気だけでなく、仕事優先ですれちがいばかりだった、娘との確執にも立ち向かわなければならなくなる点だ。いわば二重の苦悩にぶつかるのだ。

「しかしなんといっても見どころは、リリアンを演じるジェシカ・ラング、アシスタントのイーディスを演じるキャシー・ベイツという、2大アカデミー賞女優の共演でしょう。よくこんなキャスティングが実現したと思います。薄れゆく意識のなか、わが道を突き進むジェシカ・ラング。呆れながらも彼女を支えるキャシー・ベイツ。この2人を見ているだけで、シニア層は、“自分も、もうひと頑張りするか”といった気分になること確実です」

 なお、ここで演じられる演目は、チェーホフの『桜の園』。没落貴族のラネーフスカヤが、金策のため、広大な家屋敷(桜の園)を手放す。その別れのシーンがクライマックスだ。

「舞台のセリフと、リリアンの胸中が見事に重なり、『桜の園』を知っている方には、たまらないクライマックスだと思います。新しい年の始まりに気分を一新できる、おとなのための、まさに元気が出る映画です」

 ちなみにジェシカ・ラングとキャシー・ベイツは、ほぼ同年齢で、現在ともに76~77歳である。

(1月9日より、TOHOシネマズシャンテほかにて、全国公開)
(C)2024 Crazy LEGS Features LLC /PG-12 配給/彩プロ

※各作品の上映劇場等にかんする詳細は、公式HPでご確認ください。

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。

デイリー新潮編集部

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