年末年始に“劇場で観たい”おとなのための「海外映画」傑作ベスト3…見逃せない邦画もご紹介!

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「落下の王国」4Kデジタルリマスター版(ターセム監督、印・英・米合作、2008/25)

 さて、ここからは、おとなのための、海外作品ベスト3をご紹介しよう。

 まずは、11月21日に43館で公開以来、満席がつづき、120館に拡大。興収目標4000万円だったのが、2億円を突破しているという、「落下の王国」4Kデジタルリマスター版である。予想以上の大ヒットで、越年上映が決定的となった。

「ある意味、これほどお正月向きの映画は、ないかもしれません」

 と映画ジャーナリスト氏も太鼓判を押す。

「これは、エンタメ・テイスト満点の“アート系映画”です。2008年に公開され、一部の熱狂的ファンに絶賛されましたが、その後の再公開も配信もなく、パッケージも廃盤。半ば“まぼろしの映画”と化していました」

 この映画、世界的デザイナーの故・石岡瑛子が衣裳を担当したことでも知られていた。

「2020~21年に東京都現代美術館で大ヒットした《石岡瑛子/血が、汗が、涙がデザインできるか》展で、この映画が紹介されたことで、“そんなスゴイ映画があったのか”と評判になりました。よって今回は、満を持しての再公開だったのです」

 これは、インドのターセム監督が、構想26年、4年をかけて撮影・完成させたという、“自主製作映画”である。壮大なシーンの連続だが、CGを一切使わず、世界遺産13カ所、24カ国以上でロケされた、“トンデモ映画”ともいえる。

 時代は1915年。映画の撮影中に大怪我を負って入院中、厭世気分で自殺願望に襲われているスタントマン、ロイが主人公。たまたまおなじ病院に入院中の少女に、自殺用の薬を薬剤室から盗んで来させるため、冒険物語を聞かせ始める。その物語が、劇中劇となって、展開していく。

「その物語とは、6人の勇者たちが一致団結して悪に向かう、一種の冒険おとぎ話なのですが、そのロケーション映像と衣裳、ビジュアルがあまりに強烈で華やか、ほとんど美術品を愛でるような画面の連続です。“アート系映画”は、作り手の自己満足が多く、“どう感じるかは観客次第”と、放り出すような作品が多いのですが、本作は、そうではありません。世界遺産紀行のおもむきもあり、ちゃんと、観客に寄り添った“アート系映画”で、ワクワクしながら観ることができます」

 特にクライマックスでは、9世紀の建造で、13階建て、3500段、深さ約30メートルという、有名な《インド、チャンド・バオリの階段井戸》が登場するのだが……。

「このシーンには、言葉を失うでしょう。何度も言いますが、CGは一切、使用されていない、リアルなロケーション実写です。ここでなにが起きるかは、実際にスクリーンでご確認いただきたい、としか言いようがありません」

 美しい映像、衣裳、ものがたり――これぞお正月映画の醍醐味満点といえよう。

(C)2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved. 配給/ショウゲート

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