被疑者が逃走、監視役の警官2名は2時間気づかず…間抜けすぎる「静岡県警」に元刑事は「警備体制を根本的に検証すべき」
傷害と窃盗の罪で起訴され勾留中だった島田健太郎被告が、入院先の病院から逃走したのは12月5日の未明だった。半日後には発見され逃走容疑で逮捕されたものの、それがなければ全国ニュースにもならなかっただろう。この一連の事件、考えさせられる要素が少なくない。
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逃走後に報じられた経緯をまとめると、島田被告が逮捕されたのは9月3日。静岡県富士宮市のスーパーで食料品1点(500円相当)を盗んだところ、呼び止めた警備員を転倒させケガを負わせたとして富士宮署に強盗致傷の容疑で逮捕された。
1斤のパンを盗んで19年もの監獄生活を送るはめになった「レ・ミゼラブル」のジャン・ヴァルジャンを思い起こした人もいるのではないか。500円相当の食料品の窃盗に加え警備員を転倒させケガを負わせたため強盗致傷である。もっとも、検察もさすがに無理があると思ったのだろう。強盗致傷ではなく傷害、そして窃盗の過去もあるようで常習累犯窃盗の罪で起訴した。
富士宮署に勾留されていた島田被告が行動を起こしたのは11月も終わる頃だ。法律に詳しい人なら、勾留期間が長すぎないか?と思うかもしれない。逮捕後の勾留期間は原則10日間だからだ。社会部記者は言う。
「彼はすでに起訴されているため、2カ月以上の勾留が可能となります。そのため新聞各紙も、島田容疑者ではなく島田被告と報じています」
11月28日、島田被告は食事中に箸で自身の腹を刺す。そのため伊豆の国市にある順天堂大医学部付属静岡病院に入院。彼の部屋は7階にある個室だった。そこに富士宮署は2人の警察官を配置し、交代制で監視していた。被告の左手首には手錠がされ、手錠の一方は可動式の点滴スタンドにつないでいたという。
「島田被告は何らかの方法で、自分が12月5日に退院する予定であることを知ったようです」
日付が退院予定日となってすぐのこと――。
なぜ気づかなかったのか
「警察官は午前1時15分頃、島田被告が病室内のトイレに入ってから戻ったのを確認。それから午前2時までの間に彼は逃走しました。逃走時間が判明したのは、午前2時過ぎ、被告の姿が病院近くの防犯カメラに映っていたからです。ただし、警察官が逃走を確認したのは午前4時頃だったのです」
どうやって7階の病室から逃げたのだろう。
「病院の屋外にある非常階段付近に、被告が履いていたサンダルと見られる足跡が見つかっています。彼は7階の病室の窓につけられた補助鍵を壊して外に出て、5階まで降りた後、壁の突起部分を伝って非常階段に移動したとみられています」
なんだか釈然としない。元神奈川県警刑事の小川泰平氏に聞いた。
「確かにおかしいんです。まずおかしいのは監視体制です。監視に入った2人の警察官のうち1人は病室内、もう1人は病室外の廊下にいたと報じられています。入院中の容疑者や被告を見張る際、警察官は最低でも2人ですが、2人とも病室内にいるのが当たり前です。ましてや被告は自傷行為によって入院しているわけですから、7階の窓から飛び降りて自殺する可能性だってある。逃走の恐れもあるから7階にしたのかもしれませんが、なぜその部屋で2人の警察官が見張っていなかったのか、根本的な誤りだと思います」
一部報道によれば、午前4時に逃走が判明したのは、警備の交代時間だったためという。
「逃走から少なくとも2時間以上が経過しているわけです。その間、病室内の警察官は一体何をやっていたのか。カーテン越しにベッドの被告を監視していたと言っていますが、本当でしょうか。島田被告は病室の窓の鍵を破壊して外に出た。さらに、手錠がハマった点滴スタンドを外し、置き手紙まで書いている。これらに気づかないことなどあり得ません」(小川氏)
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