美貌の先輩がストーカーに豹変 尾行、番犬に毒餌、怪文書…男子高校生が受けた異常な「つきまとい行為」とは【川奈まり子の百物語】
待ち伏せ
呼びされたとき、B先輩は彼にラブレターを渡そうとした。
だが、先に述べたような理由で、彼は受け取らなかった。
そして「どうして?」と食い下がってきたB先輩に対して、彼は正直に「A子さんとおつきあいすることにしたので」と答えた。
するとB先輩は悔しそうな表情を見せながらも「わかった」と言ったので、理解を得られたものと彼は信じたのだが、後に起きたことを思えば、そうではなかったのである。
A子と2人で帰ろうとしたところ、校門のところでB先輩に待ち伏せされたのは、明くる日の放課後のことだった。
昨日振ったばかりだ。バツが悪く、彼は黙って軽く頭を下げただけで通り過ぎようとした。
しかしA子は何も知らない。
彼女は持ち前の明るさで「先輩、誰か待っているんですか?」と無邪気に話しかけた。
するとB先輩はこわばった顔で「彼と話があるから、あなたは遠慮して」とA子に応えた。
利幸さんは動揺したが、とりあえずB先輩に従うことにし、A子を帰らせた。
いやがらせ
「A子が振り返りながら行ってしまうと、僕は“こういうのは、やめてください”とB先輩にストレートに伝えました。それでも先輩が何か言い募ろうとしたのを……耳を貸さずに“ごめんなさい!”と頭を下げて、脱兎のごとくその場から走って逃げたのです。B先輩をその場に置き去りにして。……不器用すぎますね。でも僕は16歳のガキだったんですよ」
ここまでなら、よくある青春のひとコマだと筆者は思う。
だが、その後もB先輩はあの手この手で彼とA子に絡んできたのである。
まずは、英語研究会の部活動中に、A子を露骨に無視しはじめた。
ところが、A子は他の先輩方に可愛がられており、同級生の間でも人気が高かったので、無視に同調する者はなく、これは完全にB先輩の独り相撲になってしまった。
するとB先輩は部活に顔を出さなくなり、代わりに2人の後をつけるようになった。
「通常、尾行と言ったら気づかれないようにするものでしょう? だけどB先輩は、あえて存在をアピールしてきました。ほんの数メートル後ろを歩いているので、角を曲がったときや何かに姿が視界に入るわけです。……で、こっちが驚くと、厭な感じにニヤッと笑ってみせるので……ムカつきました。それに、綺麗な人だっただけに不気味に感じました」
並行して、学校に置いていた彼やA子の持ち物が何度か荒らされた。
B先輩のしわざだと思われたが、証拠が無かった。
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