美貌の先輩がストーカーに豹変 尾行、番犬に毒餌、怪文書…男子高校生が受けた異常な「つきまとい行為」とは【川奈まり子の百物語】

  • ブックマーク

【前後編の前編/後編を読む】 ポケベルに来た「88981064」のメッセージ…送り主は恋人じゃない まだ終わらない先輩女子の“影”

 これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。今回は、高校時代に先輩につきまといをされた男性の話を紹介する。

 ***

 皆さんは人に後をつけられたことがあるだろうか。

 あるいは、しつこく付き纏われたことは?

 ほとんどの方、特に男性は「そんな経験はない」とお答えになると思われる。

 なぜならストーカー被害に遭ったことがある人の割合は、警備会社アルソックのアンケート調査や平成30年度の男女共同参画会白書などによれば、女性のおよそ10%、男性ではおよそ5%に過ぎないからだ。

 男性のストーカー被害も少しずつ増えているとのことだが、これについては、女性のストーカーが増えたのではなく、男女平等が広がるにつれ男性でも被害を申告しやすい雰囲気が社会に醸成されてきた面も考慮すべきかもしれない。

 また、ストーカーなる行為の概念が広く社会に浸透してきた影響も鑑みる必要がある。

 現在50歳の利幸さん(仮名)が高校生の頃には、ストーカー行為のなんたるかは一般に知られていなかった。

告白

 彼が高校に入学したのは1991年で、日本においてストーカーが恐怖を伴って知られるきっかけとなった桶川ストーカー殺人事件(1999年)の8年も前だ。ストーカーの犯罪性は、事件の翌年にストーカー規制法が制定されて、ようやく世間に認知されはじめたのである。

「今なら、初めのうちからもっと用心したのかもしれません」と彼は言う。

 北関東出身の彼は、中学時代の成績が優秀だったことから高校は地域の一番手校と言われていた県立高校に進学し、東京都内の有名国公立大学を目指して勉学に励んだ。
 
 生来、真面目なたちで勉強が苦にならなかった彼は、高校でも学年の上位5位以内の成績をキープ。高一の夏休みから進学塾にも通いはじめ、部活は実利を重視して英語研究会に入部した。
 
 英語研究会は、部員の七割が女子生徒で、男子は少数派だった。
 
 だからというわけではないかもしれないが、部内限定で彼はモテはじめ、やがて女子部員2人から恋の告白を受けた。
 
 それは高一の12月初旬のことで、そのうち1人は1学年上の先輩だったという。
 
「先輩については、正直、戸惑ってしまいました。昼休みに同級生の女子部員・A子から告白されてOKしてしまったばかりでしたから。同じ日の放課後にB先輩に呼び出されてしまって、これはちょっと困ったことになったぞと思いながら、お断りしたのです」

 彼はA子と付き合うことにして、先輩部員の方は振ってしまったのだという。

「B先輩は世間一般の標準に照らしたら、かなり美人でした。でも暗い雰囲気で、口数が少なくて、ちょっととっつきにくかった。それに比べてA子は、笑顔が可愛らしくて親しみやすかった。いつもポジティブで、面白いことを言って人を笑わせるタイプです。女子からも男子からも人気者があって、僕もすぐに心を惹かれていました」

 しかも彼女は成績も抜群。英研に入部したての頃に入部動機について、交換留学制度のある東京の私大に進学したいからだと話していたそう。

「だったら一緒に上京できるかもしれないと思って一気に夢がふくらみましたし、事実そうなったのです」

次ページ:待ち伏せ

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。