心霊写真を撮ってしまった女子大生…写りこんだ影の正体は「いるはずのない知った顔」 怨念は拡散されたのか【川奈まり子の百物語】

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未佳さんの未練

 良い写真がたくさん撮れていた。画像ストックサイトに送るつもりでいたから、お焚き上げするわけにはいかない。

 しかし、もちろん、必要な写真データをパソコンに取り込んでからやってもらう分には困らないわけである。
 
 そこで未佳さんは心霊写真2枚を残して、他の写真データをパソコンに移した。
 
 しかる後に、母に付き添われて菩提寺に行き、住職にSDカードを託し、厄除けの護摩祈祷を受けた。

 住職の読経を聞きながら、未佳さんも従姉の供養を願って真剣に祈り、帰るときには清々しい気持ちになっていた。

 さらに、母と2人で従姉の墓参りをしてから帰宅した。

「もう大丈夫でしょう」と母は安心した口調で言い、未佳さんも同感だった。

 だが、これで終わりではなかったのだ。

1枚残らず

 画像ストックサイトに函館の写真をアップして1週間後、未佳さんがストックサイトの自身のアカウントをチェックしたところ、函館山で撮った夜景の写真に不気味な人影が写っていることに気がついたのだ。

 最初は無かったものだ。

 画面の右端の方に、うっすらと白っぽく、人の顔のようなものが浮かんでいる。

 おまけに、目を凝らしてよく見れば、その顔の下には水色が……はっきり言ってしまえば従姉が最期の日に着ていたブラウスのそれだとしか思えない色が、淡く滲んでいるではないか。

 未佳さんは震える指でパソコンを操作して、その写真をストックサイトから削除した。

 それから函館旅行で撮った他の写真も確認してみたのだが……。

「全滅でした」と、インタビューのとき、未佳さんは声に自嘲を滲ませて私に言った。

「欲をかいてデータを移したのが全部無駄になってしまいました。どの写真にも従姉の影が写り込んでいたので、全部消すしかなかったんですよ。何も抵抗せず、カメラから取り出したSDカードを素直にお焚き上げしてもらえばよかったってことです! ……海鮮丼の写真も見逃してもらえなかったんですよ!」

 最後のひと言に思わず吹き出すと、未佳さんも笑い声を立てた。

 だが、すぐに、「今はこうして笑っていますけど、あのときは“怖い”なんて単純な言葉では片づけられませんでした。従姉の執念を思い知らされた気がして、哀れでもあり、同情もしましたし、もちろん恐ろしくもあって」と、おっしゃったのであった。

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