心霊写真を撮ってしまった女子大生…写りこんだ影の正体は「いるはずのない知った顔」 怨念は拡散されたのか【川奈まり子の百物語】
水色の半袖ブラウス
従姉は爽やかな水色の半袖ブラウスを着て、伯母が押す車椅子に乗っていた。
伯母夫婦と従姉、未佳さんと両親の6人で、レストランで会食したのだ。
元気な頃の従姉はショートボブだった。その髪は今や胸もとまで伸びていたが、髪の毛の豊かさと、痩せてやつれた顔や貧相な体型との対比が露骨で、痛々しかった。
しかし、その場では、それなりに和やかに時が過ぎて、やがて最後に記念撮影をすることになった。
未佳さんは、いつもの習慣で自分のデジカメを持ってきていた。
そこで、店員にカメラを託して、シャッターを切ってもらった。
そのとき従姉は未佳さんの右隣にいた。
写真は上手く撮れていた。従姉も笑顔だった。
未佳さんは従姉と伯母たちにデータを送る約束をし、帰宅後ただちに自分のパソコンに写真データを取り込んで、それを伯母あてにメールで送信した。
――まさか、伯母がメールを開封する前に、従姉が自分の部屋のドアノブで首を吊って死んでしまうとは予想だにしていなかったのである。
お焚き上げ
従姉は、元気な未佳さんと会ったことで、絶望を深めてしまったのかもしれない。
せめて同い年でなければ、彼我の違いを比べたとしても、そこまで力を落とすことはなかったのかもしれない。
あのとき2人を会わせるべきではなかったと大人たちは後悔したのではなかろうか。
後に伯母が未佳さんに話したことによれば、誰よりも従姉その人が未佳さんに会いたがっていたそうなのだが。
未佳さんは、元気いっぱいで旅行を満喫している大学の同級生たちに、こんな話を打ち明ける気にはなれなかった。
しかし、旅行を終えて、帰省中だった実家に戻ると、すぐに件の写真を母に見せた。
「1枚目も怖いけど、2枚目の方が危険な気がする」と母は言った。
未佳さんがブレて写り、すぐ横が黒く翳っているのは、従姉が未佳さんをあの世へ連れていきたがっていることを表しているに違いないというのである。
「伯母さんに言う?」と未佳さんが問うと、母は首を横に振って、「まさか!」と否定した。
「そうでなくても半病人みたいになっているのに、こんな写真が撮れたと知ったらショックで倒れてしまうよ。これは、このままにしておくわけにはいかない。この写真のデータはどうなっているの?」
「SDカードに入ってるよ」
「じゃあ、それをお寺でお焚き上げしてもらいましょう」
「……え?」
未佳さんは躊躇した。
なぜなら函館で撮った他の写真も、全部、同じSDカードに入れていたからだ。
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