心霊写真を撮ってしまった女子大生…写りこんだ影の正体は「いるはずのない知った顔」 怨念は拡散されたのか【川奈まり子の百物語】

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【前後編の後編/前編を読む】旅の思い出をネットにアップしたら「心霊写真だった」 カメラ好き女子大生が映した“季節外れの怪異”とは

 これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。

 相談者の未佳さん(仮名・35歳)は学生時代からお小遣い稼ぎとして、画像素材ストックサイトに写真をアップしている。だが、過去に1度だけ、サイトから写真を取り下げたことがあるという。それは大学2年生のとき、同級生3人と行った冬の北海道・函館旅行の際に撮れてしまった写真。美しい夜景やおいしそうなグルメ……すべてアップする予定だったが、全員でスナップ写真を撮った際に「心霊写真」が撮れてしまったのだ。そこに写った黒髪ロング、水色の涼しげな服の「彼女」に未佳さんは見覚えがあった。それというのも……。

 ***

 未佳さんには仲の良い同い年の従姉がいた。
 
 母方の伯母のひとり娘だった。母と伯母は非常に仲が良い姉妹で、家同士も近かったことから、従姉と彼女はきょうだいも同然に育った。
 
 従姉も都内の大学に進学が決まり、家が他県にあったので、2人でアパートを借りて下宿する予定で、一緒に物件探しをしていた。
 
 ところがその最中に、従姉は自宅の階段から転落して脊椎を傷め、休学を余儀なくされてしまった。
 
 未佳さんは従姉とアパートに一緒に住む計画を断念して、大学の学生寮に入った。

 そして学生生活が充実するにつれて、日頃は従姉の顔を思い浮かべることすらなくなっていった。

変わりゆく従姉

 やがて夏休みになったが、従姉はまだ快復していなかった。車椅子で過ごしているそうで、表情は暗く沈んでいた。体つきも変わり、別人のように小さく萎んでいた。

「未佳ちゃんはいいなぁ。本当にうらやましい」

 従姉はそう言って、ふだん何をしているのかを盛んに聞きたがった。
 
 気の毒に思い、求められるままに話しはじめたが、従姉の要求はキリがなかった。

 大学に入って以降の未佳さんのすべてを知りたがり、学んでいることや新しい趣味のみならず、寮のようすや先生方について、新しい友だちの容姿や出身地、見て面白いと思ったものや食べたものまで、3時間にわたって延々と詮索した。

 未佳さんは面倒になり、また、従姉があまりにも熱心なので、空恐ろしくも感じられてきて、最後は適当な理由をつけて逃げるように伯母の家から立ち去った。

 その後、母から、従姉が精神科を受診していることを聞かされた。

「背骨が折れて立てなくなってから感情の浮き沈みが激しくなって、家に引き籠もってリハビリにも行かず、伯母さんたちがどうしたものかと思っていたら、とうとうドアノブで首を吊ろうとしていたんですって。だから精神科に連れていったそうなの。治療を受けて良くなるといいけど……」

 それ以来、未佳さんは、従姉に会うのを避けるようになった。

 家族で集まれば会話をしたが、一対一で会おうとはもう思わなかった。

 従姉を嫌いになったわけではなかったとのことだから、察するに、当時の未佳さんは希望と若々しい生命力に溢れており、同じように明るいエネルギーに満ちた者たちを本能的に求め、逆に、陰の気配を遠ざける傾向があったのだろう。

 また、かつて親密だったからこそ、痛ましく変貌してしまった従姉を目の当たりにするのも苦痛だったに違いない。

 最後に顔を見たのは、今年の夏休み中のことだったという。

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