「景気悪化で強気に戦える状態にない」 中国が対日姿勢をトーンダウンさせる理由 「圧力はブーメランのように跳ね返り…」
高市早苗首相(64)の台湾有事を巡る「存立危機事態」答弁に対して、中国側の怒りが収まりを見せていない――といった報道が大勢を占めている。10月25日には、中国・重慶で行われたフィギュアスケートグランプリシリーズ中国杯で、アイスダンスで中国のレン・ジュンフェイ、シン・ジャニン組の演技が終わると、こともあろうに大陸間弾道ミサイル「東風(DF)61」を模したぬいぐるみがリンクに投げ入れられるという「事件」も起きている。今後の日中関係はどうなるのか、中国の事情に詳しいライターの西谷格氏に聞いた。
***
【写真を見る】日本を挑発? 「大陸間弾道ミサイル」を模したぬいぐるみを手にするアイスダンスの中国ペア
高市首相の発言後、中国共産党の機関紙「人民日報・日本語版」は11月14日、「高市首相の台湾問題における一線を越えた挑発は断じて容認せず」とのタイトルで記事を掲載。
同じく人民日報系の「環球時報」は社説で《この誤った発言は最近の中日関係の急激な悪化の根源だ》と書いた。
さらに中国共産党北京市委員会の機関紙「北京日報」は以下のように報じた。
《台湾は中国の核心的利益のなかの核心であり、レッドラインのなかのレッドラインだ。高市は台湾問題を日本の「存立危機事態」と関連付けた初めての首相だ。敗戦後、中国に対して武力による威嚇を初めて行った指導者との見方もある》
《どれほど横暴な悪い人間に対しても、中国人は道理を説いて相手を説得し、「以直報怨(真っ直ぐな正しさで怨みに報いる)」の態度で望んできた。日中の平和と友好に協力する日本人は、みな友人である。日本の一般庶民が過ちを犯したわけではない。間違っているのは、日本の右翼分子たちである。この点ははっきりさせておこう。友人が来れば酒を出し、オオカミが来れば銃を出す。正義は我らの側にある》
こうした報道について、コメント欄も荒れに荒れた。
《原子爆弾を5発落としてやればいい! 敗戦国には原爆を使っていいんだ! 今回は過去最高に凶悪だ! 短期決戦だ!》
《中国人が日本製品をボイコットし、日本旅行をやめるだけで、高市早苗への有力な反撃になるぞ》
《これって謝って済むことか? これは生きるか死ぬかの戦いだ! あいつらが死にたいというなら、躊躇なくやってやる!》
台湾問題だけは
そもそも高市首相が「存立危機事態」答弁を行ったのは11月7日の衆議院予算委員会だった。立憲民主党の岡田克也議員が、中国による台湾の海上封鎖が発生した場合、存立危機事態となるのは具体的にどんなケースなのかと質問し、これに対する答えだった。
高市首相:戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考えます。
あくまで武力行使があった場合という条件付きだったのだが……。『一九八四+四〇 ウイグル潜行』の著書もある西谷格氏は言う。
「日本の首相が台湾問題について具体的に言及したことは、おそらく中国政府・中国人にとって、靖国参拝よりも激怒するレベルの事態なのだと思います。そもそも日中が国交を樹立する際、『台湾問題は中国が平和的に解決するから、これについては物騒なことは言わないでね』と約束したことを、中国は日本に守って欲しかったという意図があるのだと思います」
もっとも、平和的に解決するなら、そもそも存立危機事態には当たらないのだが……。
「それでも中国人にとって、『台湾は中国の一部』という考えが強固にあって、それについて他国からとやかく言われることは内政干渉として受け止め、国家の基盤を揺るがされたと考えてしまうんです。無理やり日本に当てはめると、『天皇制を廃止すべき』とか『沖縄は独立しろ』などと習近平主席に言われているようなものです」
実際、環球時報は19日、「琉球諸島の主権の帰属は歴史的、法的な議論が常に存在している」とする社説を掲載した。
[1/3ページ]


