高市答弁「正しい派」「間違い派」の両方が押さえておくべき最低限のファクト 台湾外交部の冷静な分析は

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うかつなポスト

 こうした「うかつ」さは、総理就任前にも見られた。2024年9月23日、つまり前回の総裁選のさなかに、高市総理はX上にこんな投稿をしていた。

〈本日の午後、ロシアのIL-38哨戒機1機が、3度にわたって北海道礼文島北方の領海上空を侵犯しました。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、通告及び警告のほか、フレアによる警告を実施しました。ちなみに、対領空侵犯措置中のフレア使用は初めてだそうです。

 自民党総裁選の討論の中で、複数の候補者とともに、過日の中国軍の行為への対処が緩すぎて「日本がナメられている」旨の発信をしたことも、多少は影響したのかもしれません。中国、ロシア、北朝鮮が、外交・軍事・経済面で協力関係を深めている中、日本の国防力強化の必要性は論をまちません〉
 
 総裁選の討論の内容が、現場の自衛官の対処に影響したのかも、と匂わせるこのポストに、筆者は当時仰天した。もし総裁選での一候補の発言が「戦後初のフレア使用」という事態に多少なりとも「影響した」のであれば、むしろ問題視されてしかるべきだからだ。

 本来あってはならないことを、自衛隊という組織の指示系統の重要性を踏まえず、まるでいいことであるかのように、あっけらかんと公に発信してしまううかつさ。当時も批判的なコメントがいくつもついたが、その発言の危険性はメディアなどではほとんど問題視されず、今日に至ってもまだポストは削除されていない。

 2025年の総裁選ではそれまでの強硬な発言を控えたとして評価されていた高市総理だが、かつての発言や発信を見ればこうした事態は予測し得るものだったともいえる。

 だが、台湾有事や集団的自衛権について、日本としてのあり様を考えてこなかった人々からの批判のみでは、高市総理にもそれを支持する世論にも響かないだろう。

 単に中国の反発に感情的に反応しているか、高市政権批判の道具として中国を利用しているようにしか受け止められまい。

 改めて台湾の置かれている現状や有事勃発の際の状況について、あるいは集団的自衛権のあり様について確認する必要がある。その意味でも、台湾外交部による「分析」は貴重なのである。

梶原麻衣子
1980年埼玉県生まれ。中央大学卒業。月刊「WiLL」、月刊「Hanada」編集部を経て現在はフリーの編集者・ライター。著書に『「“右翼”雑誌」の舞台裏』(星海社新書)。

デイリー新潮編集部

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