「威圧的外交は中国政府の伝統」「高市発言にサプライズはない」 欧米メディアは「日中対立」をどう論じているのか

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習近平も高市も引かない未来

 最後に、日中関係の今後はどうなるのか。各紙の予想をまとめよう。

 エコノミスト誌は、中国のSNSで高市首相への激しい非難が相次いでいることを指摘する。高市氏を「魔女」「トラブルメーカー」と評する声が噴出しているとする。

 一方で、2012年に日本政府が尖閣諸島を購入した時のように、全国規模での路上での反日デモは発生させないのでは、と予想する。習近平は歴代指導者と比較しても、群衆を街頭に解き放つことには否定的で、事実、国家主席就任以来目立った全国的なデモは起きていない。

 とはいえ、中国が台湾問題に関して、他国の自由な言説を許すとも思えない、とする。中国政府は2027年までに台湾を武力制圧する態勢を整えようとしている。2024年に当選した台湾の頼清徳総統は対中強硬派としても知られ、中台関係も緊迫している。

 高市首相は発言については撤回せず、「今後は具体的な言及はしない」としているが、ナショナリストとして就任早々、中国に対して弱腰な姿勢は見せたくないはず。日本も中国も引く気がない以上、日中関係は悪化する可能性もある、とエコノミストは結んでいる。

中国は日本の「反高市派」を利用するだろう

 WSJのミード氏は中国が日本国内の反高市派を利用する可能性を指摘する。現実として、日本の中国への経済的な依存度は高い。多くの日本企業は重要な輸入品を中国の工場に依存しているし、中国市場へのアクセスが不可欠な企業も少なくない。

 また、自民党の有力者の多くはこれらの企業と蜜月関係にある。中国関連企業の影響力を無視できない選挙区もあるし、インバウンドによる収入に依存する地域を代表する議員もいる。

 中国からの経済的な圧力が続く場合、党内の大物から高市首相に対して、対中強硬姿勢を緩めるように、という水面下のメッセージを送るかもしれない、と予測している。

 関連記事「〈敗戦国には原爆を5発落とせばいい〉 中国で吹き荒れる日本への暴言 『駐大阪総領事は“ツイ廃”と揶揄されるほどのSNS中毒』」では、中国国内で日中対立がどう論じられているかについて詳述している。

出典:

※1:China and Japan are in a vicious game of chicken over Taiwan(The Economist・11月18日)

※1-2:Meet Japan’s “Fireball”, Takaichi Sanae, its polarising new leader(The Economist・10月9日)

※2:Why China Is Picking a Fight With Japan(The Wall Street Journal・11月17日)

※3:Tourism stocks plunge as Japan-China tensions soar(Financial Times・11月17日)

※4:China intensifies pressure on Japan with tra vel bans and cancelled events(Financial Times・11月18日)

湯浅大輝(ゆあさ・だいき)
米アリゾナ州立大学に留学後、同志社大学卒業。ジャーナリストとして活動開始。経済メディア→小売専門誌→フリーに。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多岐にわたるテーマで取材・執筆する。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に「出生数75.8万人の衝撃」「奈良のシカ」(JBpress)「リニア20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks)「精肉MDの新常識(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。

デイリー新潮編集部

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