「威圧的外交は中国政府の伝統」「高市発言にサプライズはない」 欧米メディアは「日中対立」をどう論じているのか
高市早苗首相の「中国から台湾への武力攻撃は、日本にとっての存立危機事態にあたる可能性が高い」という主旨の発言が、日中関係に緊張をもたらしている。中国政府は自国民に日本渡航を自粛するよう呼びかけ、日本産水産物の輸入停止という措置も報じられている。首相就任後わずか1か月で外交上の危機を迎えた高市政権の対中姿勢を欧米メディアはどのように見ているのか。
【湯浅大輝/フリージャーナリスト】
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中国を刺激するのは「時間の問題」だった
英エコノミスト誌※1は、高市首相が中国を刺激したことに対し「遅かれ早かれ、そうなる運命だった」と達観している。元々同誌は自民党総裁就任時から、高市氏を「日本の保守派の支持者たちを奮い立たせる、対中強硬派のナショナリスト」と評していた※1-2。
また、高市首相の存立危機事態発言は、中国にとっても特段のサプライズではないとも分析する。
中国の人民日報は「高市氏の発言は、1945年以降の国際秩序に対する『重大な挑戦』」だとしているが、エコノミスト誌は、2021年には麻生太郎副首相(当時)が、「台湾で大きな問題が起きると存立危機事態に関係してもおかしくない」と述べていた事実を引き合いに出す。
当時も中国は激怒したが、それでも2021年版の日本の防衛白書に「台湾をめぐる情勢の安定はわが国の安全保障にとって重要だ」と明記されていたことを同誌は強調している。
台湾問題を巡っては、今回に限らず、過去にも日中間で火種が燻っていたとエコノミスト誌は分析しているのだ。
高市の罪は「正直に答えた」ことだ
米ウォール・ストリート・ジャーナル(以下、WSJ)紙は、コラムニストのウォルター・ラッセル・ミード氏のオピニオン記事※2を掲載。
ミード氏は「高市首相の『罪』があるとすれば、立憲民主党の岡田克也衆院議員からの具体的な質問に対し、『正直に、率直に答えた』という点だ」と高市首相を評価する。
2015年に成立した安全保障関連法では、存立危機事態において、日本の武力行使を認めている。中国による台湾侵攻は、日本の食料・エネルギーの輸入を混乱させ、日本の国家としての存続を危うくする。文字通り「存立危機事態」になり得るとミード氏は言う。
ミード氏はさらに、高市氏の「核」に対する考え方が、中国政府を苛立たせているのではないかとも分析する。高市氏が非核三原則の見直しを検討していることは日本のメディアでもすでに報道されている。これが、中国政府の虎の尾を踏んだのではないか、とミード氏は睨んでいるのだ。
「中国は猛烈な勢いで核兵器増産に邁進している。そうした中、近隣諸国を、核を持たない、非力な国で固めたいと考えるのはおかしな話ではない」(ミード氏)
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