追い詰められているのは「高市総理」ではなく「習近平」? 対日強硬姿勢は「軍の混乱」「経済悪化」「健康不安」を隠す“虚勢”の可能性も
高市早苗総理の7日の国会答弁で出た「台湾有事は日本の存立の危機事態」発言が中国側の激しい反発を招き、先月30日の日中首脳会談による友好ムードは一転、凍てついた氷のような冷たい関係に変わってしまった。中国政府は国民の日本訪問や留学の自粛を求めたほか、日本の水産物の輸入停止を通告するなど対応をエスカレートさせるばかりだが、見方を変えると、実は短期間に日本への報復措置を次々と打ち出さなければならないほど追い詰められているのは習近平氏の方だとも言える。軍の混乱や経済の悪化、そして自身の健康不安などを抱え、一連の中国の対日高圧姿勢はこれらの不安材料を隠すための虚勢とも受け取れるのだ。
【相馬勝/ジャーナリスト】
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対応を決めたのは習氏
高市総理の国会答弁以来の経過を見てみると、発言翌日8日の薛剣駐大阪総領事による「その汚い首は一瞬の躊躇なく斬ってやるしかない」というSNS投稿以外、中国側の反応は極めて鈍かった。反応がエスカレートしたのは国会答弁から6日後の13日夜、中国外務省の孫衛東外務次官が金杉憲治・駐中国大使を召喚するという、厳しい外交措置を打ち出してからだ。
この召喚について、中国は、孫氏が上層部からの委託で対応する「奉示」によって大使を呼び出したことを明らかにしている。この「奉示」について、中国国営中央テレビが運営するSNSアカウントは15日、孫氏が「外務次官の身分ではなく、高位層を代表して立場を表明した」との専門家の分析を紹介している。
日中間で「奉示」という言葉が使われたのは初めてということなので、金杉大使の召喚は、孫次官の意思でなく、それ以上の高位の幹部、例えば、党最高幹部である序列2位の李強首相や中国の最高指導者である習近平国家主席の意志で行われたことになる。中国の重要な外交政策を最終的に決定するのは最高指導者である習氏であるのは間違いないことから、今回の高市総理の「存立の危機」発言への対応を決めたのは習氏である可能性が高い。
矢継ぎ早の制裁措置
今回の対日外交路線が習氏の意思ということならば、「鶴の一声」で中国のすべての組織が「右に倣え」で、対日強硬姿勢を打ち出しても不思議ではない。
かくして、14日以降、中国国民の日本への観光旅行や留学の自粛、日本の水産物の対中輸出の手続きの追加措置、日本の映画「クレヨンしんちゃん」などの上映延期、あるいは吉本興業の上海公演中止などが次々と発表された。中国の多くの旅行会社は訪日ツアーを凍結し、客の受け入れを中止しており、年末までのツアーはほぼ全滅で、ホテル予約など全体のキャンセル数は把握できないほどだ。
さらに、19日には中国のスパイ摘発機関・国家安全省までがSNSの公式アカウントで、高市総理の国会答弁を非難する声明を発表。日本人をスパイ容疑で摘発した実績に触れ、「国家分裂を謀るいかなる企ても断固粉砕する」と主張するなど、邦人拘束の可能性をちらつかせるなど、日本人への恫喝を行っていると言っても過言ではなく、極めて不穏な状況が続いている。このように14日から1週間足らずの間に、矢継ぎ早にこれほど多くの対日“制裁措置”を決めることができるのは、やはり中国の最高指導部の意思が働いているからだと推測せざるを得ない。
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