Uberを呼んでも交渉しないとクルマに乗れない… 古市憲寿がエジプトに行ってみた結果
半日だけエジプトに行ってきた。ヨーロッパからエジプトは「ついで」に立ち寄れる距離である。ロンドンからカイロは5時間弱、パリからは4時間ほどだ。なので気楽な気持ちで旅程に組み込んだのだが、ネットの口コミを読むにつれて憂鬱(ゆううつ)になってきた。とにかくカオスだというのだ。まあ想像はできる。だが今ではUberも使えるし、世界的なホテルチェーンもあるし、何とかなるだろうと思うことにした。
とはいうものの、まず心が折れたのがビザ。アライバルビザといって、空港到着時に申請ができるのだが、時間を節約したいのでネットで申し込む。これが何度挑戦してもうまくいかない。スマホ、友人のパソコンと環境を変えても無理。結局、カイロ空港に到着して、5分ほど列に並ぶだけで簡単にビザはもらえた。ただし支払いはアメリカドルのみ。エジプトにとっては外貨獲得の貴重な手段のようだ。エジプトポンドは目下大暴落中だ。為替下落が輸入物価を押し上げ、庶民は深刻なインフレに苦しむ。
ホテルに荷物を預け、Uberでピラミッドへ向かう。欧米諸国のようにすんなりと車が到着、何の問題もなく乗り込むことができた。この時はその幸運さに気付かなかった。絶え間なくクラクションが鳴る中、Uberは市街地を進む。道路は大渋滞。単純にキャパシティオーバーらしい。カイロ都市圏は人口2000万人を抱えるが、エジプト政府は新しい行政首都を建設中で、最終的には700万人の居住を目指している。
ようやく市街地の渋滞を抜けると車はロバに囲まれた。この国ではいまだにロバが現役なのだ。馬・ロバ・ラバを合わせると170万頭が稼働しているという。
さて、ピラミッドを見て中心部に戻ろうとしてからが大変だった。Uberを呼ぶのだが、そこから終わりのない交渉が始まるのである。ライドシェアアプリのいいところは、あらかじめ価格が決まり、決済もアプリ上で行われること。だがここでは例外だった。「現金で払ってくれたらいくらでいい」という交渉を経ないと、なかなか車が来てくれないのだ。一刻も早く現金が欲しいらしい。
結局、何度も車を見送り、ようやく善良なドライバーに当たることができた。その間も街の人には声をかけられ続けた。無邪気に接してくれているのか、お金目当てなのかが判別できないのが困る。特に子ども相手だと自分が嫌な人間になったように感じる。
少しエジプトに疲れ始めていたので、向かった先はショッピングモール。きちんと商品には値札があり、何の交渉もなくモノが買える。いくらグローバル化・画一化と批判されようが、世界共通ルールが通用する空間は楽である。
11月1日、大エジプト博物館がグランドオープンした。約1530億円をかけた国家的プロジェクトだ。行ってみたいけどまた疲れそう。豊洲のラムセス大王展で我慢しようかとも思うが、豊洲もまたうちからは微妙に遠い。





