「韓国基地から中国を攻撃」で“台湾有事は日本の問題”ととぼけていた韓国人は真っ青に 在韓米軍司令官の宣言が突きつけた踏み絵

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米韓同盟はいつまで続くか

 ただ、中国が本気で圧力をかけたら韓国はくじけてしまうかもしれません。韓国には「こんな調子で原潜などできるのだろうか」との声が広がり始めました。

 北朝鮮核問題担当大使を務めたイ・ヨンジュン世宗研究所理事長は朝鮮日報への寄稿「韓国が『原子力推進潜水艦』保有に成功するには」(11月12日、韓国語版)で、保有には良好な韓米関係を持続する必要がある、と書きました。

 米国が豪州に原潜の技術を提供したのは、豪州が対中海洋作戦に寄与する核心同盟国という認識のためだ。では、原潜が完成する10年後まで、米国は韓国が自分側の国と認識し続けるだろうか――とイ・ヨンジュン理事長は首を傾げたのです。

 正鵠を得た議論です。韓国はいつまで米国側の国なのか、すでに疑問が付いています。李在明政権だって本音は核武装中立。原潜保有のため、米国側のフリをしたに過ぎません(「トランプから『原潜保有』を許された韓国 宿願だが…浮かれていられない“2つの障害”」参照)。

 そのうえ、左派のハンギョレだけでなく、保守の東亜日報の社説まで米国側に立って戦うことを拒否したのです。米政府はこうした韓国の世論の動向をじっくりと観察しているに違いありません。

音無しの朝鮮日報

――保守中の保守、朝鮮日報の社説は「ブランソン構想」をどう書いたのですか?

鈴置:いい質問です。11月25日に至るまで、社説では全く取り上げていません。米国と肩を並べて中国と戦うのか、洞ヶ峠を決め込むのか、国の運命を決定する選択です。新聞社としてこの問題を無視するわけにもいかないのに。

 ただ、在韓米軍基地を中国への攻撃拠点として使うのを認めれば、日本同様に中国から嫌がらせされるのは見えています。朝鮮日報もそんな覚悟を国民に訴える勇気は出ないのでしょう。何せ韓国には、日中対立を「漁夫の利」と喜ぶ新聞もあるぐらいですから。

 半面、ブランソン構想を拒否すれば米国から見捨てられ、原潜保有も夢と消える可能性が高い。原潜建造を訴えてきた保守系紙としてはこれも耐えがたい。

「ブランソン構想」は韓国人に突き付けられた巨大な踏み絵なのです。朝鮮日報の論説委員会もどう書けばいいのか、困惑していると思われます。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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