「韓国基地から中国を攻撃」で“台湾有事は日本の問題”ととぼけていた韓国人は真っ青に 在韓米軍司令官の宣言が突きつけた踏み絵

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保守系紙も「発進基地」にはNO

 左派とすれば「見捨てられ」よりも「巻き込まれ」の恐怖の方が大きいのです。ただ、保守系紙にもブランソン司令官を批判する社説が登場しました。東亜日報の「『朝鮮半島は中露抑制の中心軸』…韓国は米国の発進基地になるしかない」(11月19日、韓国語版)です。

・ブランソン駐韓米軍司令官が17日、上下を逆さまにした東アジア地図を公開し、韓国が北朝鮮だけでなく中国、ロシアの脅威を抑制する戦略的中心軸だと明らかにした。
・これまで北朝鮮に対する防衛に当たっていた在韓米軍の核心的役割が中露を軍事的に圧迫する方向に変わっていると明らかにしたのだ。
・さらにブランソン司令官は「北京の観点から見ると、在韓米軍の烏山空軍基地が遠距離の脅威ではなく、中国に直ちに影響を与える隣接する脅威」とした。
・台湾有事など米国が必要な時に中国を直接狙った発進基地として朝鮮半島を活用できると言っているのと同然だ。韓国が米中の軍事的衝突に巻き込まれる可能性のある重大な状況に、在韓米軍司令官がさり気なく言及したことは憂慮せざるを得ない。
・米中覇権競争と地政学的安全保障環境の変化によって韓米同盟の範囲が調整されるのは避けられない流れだ。在韓米軍の役割に対する私たちのマジノ線を明らかに提示しなければならない。米国がこれを越えないよう確実に説得しながらも、同盟の摩擦を最小限に抑えることこそが本当の外交力量になるだろう。

中国による支配に慣れ

――保守系紙といえども、「巻き込まれは嫌」なのですね。

鈴置:誰でも嫌です。しかし、日本では「台湾が侵略されれば次は沖縄、さらには日本本土」との危機感が高まった。ウクライナがロシアに侵攻された瞬間、ポーランドやフィンランド、バルト三国などロシアに隣り合う国々が一斉に身構えたのと同じです。

 メルカトル図法では韓国から離れて見える台湾も「ブランソン地図」ではけっこう近いところにあります。実際、キャンプ・ハンフリーから東京までは718マイル。これに対し台北までは23%増しの885マイルで、さほど変わらないのです。

――韓国人は「次は自分」と思わないのですか?

鈴置:朝鮮半島の歴代王朝は中国大陸の王朝の属国でした。韓国人も中国は好きではないけれど、「中国人の下で生きる」ことにさほど抵抗感はないのです。

 この韓国人独特の対中感情は日本人には理解しにくい。米国や欧州のアジア専門家からも、この点に関し質問を受けることが多いのです。『韓国消滅』第3章第2節「従中を生む『底の浅い民主主義』」をご覧いただくと、少しはご理解いただけるかと思います。
 
 話をハンギョレと東亜日報に戻すと、共通点がもうひとつあります。ハンギョレ、東亜日報ともに「たかが現場の指揮官が、自分の都合で高度な政治問題に口出しするな」と言っていることです。

韓国は日中間の空母

 韓国には「ブランソン司令官が韓国=前哨基地論に固執するのは陸軍のポストを維持するための工作だ」との見方があるようです。在韓米軍の機能が縮小すれば、そのトップである陸軍大将の就くポストがひとつ無くなるからです。

 確かにブランソン司令官は今年5月16日、ハワイで開かれたシンポジウムで「韓国は日本と中国本土の間に浮いている島または固定された空母だ」と語るなど「韓国活用論」の教導師です。中央日報の「韓国は中日の間の空母…在韓米軍、北朝鮮の撃退だけが焦点ではない」(5月17日、日本語版)が報じています。

 でも、韓国活用論を語るのは陸軍だけではありません。米海軍の制服組トップで作戦部長(参謀総長)のD・コ―ドル(Daryl Caudle)海軍大将も11月14日、ソウルでの記者懇談会で米中衝突時には韓国も米国側で戦うことは当然と語りました。

 東亜日報の「米海軍参謀総長、蔚山・巨済造船所を訪れ『ビューティフル』、『韓国の原潜、中国抑止に活用』」(11月17日、日本語版)からコ―ドル作戦部長の発言を拾います。

・韓国の原潜が中国抑止に活用されるというのは自然な予測だ。
・(台湾有事の際に在韓米軍と韓国軍がどのような役割を担うかについては)米中のような大国間の衝突は「戦力総動員(all hands on deck)」に準ずる状況だ。明らかに[韓国軍に]一定の役割はあるだろう。

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