「財務省の敷いた座布団に座ることになる」 自維連立合意書に滲んだ高市氏の“責任ある積極財政”の真相とは

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財務省の敷いた座布団に…

 病床削減をはじめとした社会保障制度の改革については、石破政権時代から自民・公明・維新の「三党合意」が結ばれていて、財務省も応援をしていたようです。高市新政権の人事を見ると、事務担当の首相秘書官として財務省から吉野維一郎氏が出ています。吉野氏は元々石破政権で与野党交渉の前面に立っていて、社会保障制度に明るい。その吉野氏が首相秘書官になっていることが「国民会議」の本気度の表れで、“大連立”に近づく一歩なのではないかと感じます。ただし、社会保障制度改革を進めていくことは財務省の敷いた座布団に座ることになる。

 維新は社会保険料を下げると言っていますが、それには別の財源が必要です。「国民会議」の議論は最終的に「消費増税」と「軽減税率」という政策に行き着くような気がしてなりません。これはまさに財務省の路線です。

 高市首相は安倍元首相との相似で語られがちですが、高市氏に財務省を抑える力はまだないでしょう。加えて安倍政権時とは異なり、少数与党で予算も法律も野党の協力なしには通らない状況であり、しかも与野党協議を財政の枠に収めるには財務省の知恵が不可欠です。‎‎

 高市政権は財政ポピュリズムを背に財務省と対立するよりも、女性首相であることや右派的な言説で問題をそらしながら、防衛費増額という方向に突き進もうとしているように見えます。防衛費増額は社会保障関連の負担軽減による巨額な増額と比べれば、財務省によって十分対応できるものです。これが高市首相の言う「積極財政」の意味ではないでしょうか。実は高市首相はかなり財務省寄りなのではないかと思うのです。

 とはいえ財務省に依りながら野党と交渉するにしても、今の自民党執行部の側で野党とうまく交渉できる人材がそろっているかは疑問なしとしません。連立相手の日本維新の会の投げてきた国会議員の定数削減など、難題は山積みです。石破政権以上に国会審議でジタバタする場面が顔を出すのではないでしょうか。

 いずれにしても、高市首相は「ポスト安倍」の最終ランナーです。安倍政権下で官房長官だった菅氏、外務大臣だった岸田氏、そして反安倍の旗手だった石破氏と、安倍元首相を継承する看板を掲げた高市首相までは安倍首相のレガシーです。ただ高市後は、もはや安倍政権と遠く離れた人物が首相候補となってきます。

 こうして安倍元首相の影響がなくなった自民党は、党としてのアイデンティティも失っていきます。その上否応なしに裏金問題の処理ひいては政治資金規正法改革を徹底するよう求められるでしょう。最初に言ったように、10%の「岩盤保守」以外の国民は、この問題に敏感だからです。今後自民党がどのような形になっていくのか、高市首相は政権運営・党運営ともに非常に難しい判断を迫られます。

デイリー新潮編集部

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