「上から目線はイヤ」と漏らす高市首相がこだわった人事とは

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真意をはかりかねて

 高市早苗政権が成立する前から霞が関は当然、その動向を見守っていた。高市氏自身、官房副長官(事務担当)や各省から迎える秘書官に誰をあてるかについては大臣や副大臣、政務官人事よりも重要視していたとされる。その人事へのこだわりは、高市氏の政策実現への意欲のあらわれと見ることもできるだろう。もっとも、首相といえども簡単に事は進まなかったようで、現在の形に至るまでにはかなりの紆余曲折があった――。

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 人事を巡っての紆余曲折は後で触れるとして、首相就任後の高市氏のある“つぶやき”が霞が関では驚きを持って受け止められているという。

「高市氏はここ最近、“上から目線でモノを言うのはイヤだ”というニュアンスのことを漏らしたそうです。首相の立場では何を言っても上から目線にならざるを得ないわけですが、それを気にしているのか、強めの言い方になると相手が萎縮するためそうならないようにしたいという配慮からなのか……周辺も真意をはかりかねているようです。まぁ“丁寧に腰は低く”程度を心がけてのことかなと見られていますが」

 と、政治部デスク。特に驚かれるようなことではなさそうなのだが……。

そんなはずないでしょ

「高市氏自身、官僚相手に主張を曲げないタイプで通ってきましたからね。それだけに、過去つきあいのあった官僚は、”上から目線はイヤ”と聞けば、驚いたり、あるいは“そんなはずないでしょ”と突っ込みたくなったりするのでしょう(笑)」(同)

 もちろん「実るほど頭が下がる稲穂かな」と「君子豹変」したのなら決して悪いことではあるまい。役人への接し方について、一部で改心どころか改宗したとまで評される高市氏だが、官房副長官(事務担当)や秘書官人事についてはかなりこだわりを見せていた。

 首相を支える秘書官らのスマホには常に様々な情報が流れ、官邸からの呼び出しがあれば早急に出向かなければならず、そう簡単に官邸近くを離れられない。激務かつ多くの制限を伴う職場だ。首相からの信頼感、国に奉仕するプライドを感じられなければ続けられない仕事だろう。

「官房副長官はその名の通り官房長官を支えるポジションです。政務2人、事務1人で政務は国会議員から選ばれ、事務は霞が関のキャリアから選ばれています。あらゆる情報が集中し、官房長官以上に内閣の要とされています」(同)

色んな名前があがった副長官人事

 今回、事務担当の官房副長官に指名されたのは前警察庁長官の露木康浩氏(62)。安倍晋三元首相の銃撃事件の責任を取って前任の中村格氏が辞任した後を受けて長官となった人物だ。

「高市氏が当初希望したのは元総務次官の大石利雄氏(旧自治省出身)。現在72歳で自治医大の理事長を務めています」(同)

 2014年夏に大石氏は総務次官となったが、同期3人が順に次官となる人事で霞が関全体を大いに驚かせたことで知られる。

「ひとことで言えば大石氏はアイディアマン。高市氏はその点を頼りにしたのでしょう。大石氏もやる気満々だったようですが、体力的な面で断らざるを得なかったと聞いています」(同)

 声をかけたタイミングが大石氏の後か同時かは判然としないのだが、続いて候補となったのが宮内庁次長の黒田武一郎氏(65)だ。旧自治省に入って総務省官房長、消防庁長官、総務審議官、総務次官を歴任して2022年に退官。2023年12月から現職に就いた。

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