アメリカで原画展が開催中! 『天才柳沢教授の生活』の山下和美氏に訊く“アナログ原画”の醍醐味 「私は今でもカラーだけアナログなんです(笑)」

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アナログ原画の醍醐味を味わってほしい

――さて、アメリカで展示されている原画はアナログが主だと思いますが、現在は山下先生もデジタルに移行していますよね。

山下:私は今でも、カラーだけアナログなんです。というのも、やりかたがわからないから(笑)。アナログだった漫画家がデジタルに移行したきっかけの一つは、コロナ禍だと思うんです。私の場合、アシスタントの皆さんもデジタルを本格的に使い始めて、いつの間にかアナログしかできないのは私だけになってしまいました。

 そこで、自分ができる範囲内で、とりあえず下描きとペン入れだけはiPadで描いて、スタッフとDropboxで共有しながら仕上げています。でも、カラーだけはやりかたがわからないので、いまだにアナログ、という状態ですね。

 もっとデジタルのやりかたがわかればいいのですが、アシスタントさんが我が家に来ないので教えてもらう機会がなく、ずっとわからないままだろうなと思います(笑)。漫画の吹き出しが“図形”ではなくて歪んでいるのは、やり方がわからないからです。

――珍しいパターンですよね。漫画家さんを取材していると、カラーから先にデジタル化する方が多い印象ですから。

山下:現在連載している『ツイステッド・シスターズ』も、表紙絵などはすべてアナログなので、カラーは原画展ができるんですよ。私は少女漫画のときはカラーインクとアクリル絵の具で塗っていました。

――デジタルにしてよかった点はありますか。

山下:紙の摩擦で手が痛くならないこと、あと左右反転ができることですね。そして、喫茶店や病院の待ち合わせ時間など、どこでも描けるのが便利です。拡大縮小ができるので、老眼にはとてもいいですよ。

漫画を描くことは、もはや“日課”

――山下先生にとって、漫画を描き続ける原動力となっているのはなんですか。

山下:20歳からプロとして漫画を描いているので、暇になったら何をしようかわからないんですよ。漫画を描くことは、よほど特別な用事がない限りは休んだことがない。とにかく描き続けるというか、描かない理由がない。具合が悪くならない限りは描いていると思います。もはや日課ですね。

――山下先生が生粋の漫画家だということがわかります。アメリカの原画展で、今後ますます山下先生の作品が注目されそうです。

山下:海外で展示をしていただけるとなると、やはり身が引き締まる思いです。私くらいの年齢になると、仕事を維持していくだけでもいっぱいいっぱいなのですが、多くの人の目に触れていただき、上を目指そうというきっかけをつくってもらえました。本当にありがたいですね。今後の展開や反響に注目したいと思っています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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