「小野田紀美」「片山さつき」の起用は“突破力と軋轢が背中合わせ”か…保守色が基調「高市内閣」の分析

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 10月21日、高市早苗内閣が発足し、18名の大臣が任命された。国民へのアピールが鮮烈な側面と、ガラス細工のような党内バランスへの配慮、保守色を基調とした政策、国家の実現への模索――。こうした角度から、新内閣の顔ぶれを読み解いてみたい。【前編】では、小泉進次郎防衛相や林芳正総務相など、自民党総裁選を戦ったライバルたちの起用の意味について分析した。【後編】では、わずか2人の入閣に終わった女性閣僚人事の意味などについて読み解く。

【市ノ瀬雅人/政治ジャーナリスト】

【前後編の後編】

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「常識保守」を唱える片山氏

 女性閣僚を見てみる。

 2人入閣は、下馬評より少ない印象が否めない。高市首相も記者会見で「6人という事前報道があった」と苦笑した。ただ、起用した2人の存在感は、それを凌駕する。

 まず、財務相を射止めた片山さつき氏は、女性初の財務省主計官でもあった。テレビの討論番組などで、矢継ぎ早に政策を論じる姿が印象的だ。高市首相は経済成長を重視する積極財政が看板である。片山氏は、財政規律を重んじる財務省で、トップダウンによる高市カラーの強力な推進者となり得るのだ。

 一方、直言する論客であり、強い発信力は、政権内で軋轢と論争を巻き起こす可能性と裏表一体だ。また、この人事は、片山氏を次の女性首相候補の一人として浮揚させる意味を持つ。片山氏は「常識保守」を唱え、総裁選で高市氏を支援してきた。論功行賞の側面もあるだろう。

公明党に推薦を求めなかった小野田氏

 さらに、高市色がより鮮明なのは、参院当選2回の小野田紀美氏の抜擢である。小野田氏は再選した3年前の参院選で、中道・リベラル色のある公明党に推薦を求めず戦った。これで一躍、名が知られた若手保守系議員である。

 安倍晋三元首相は暗殺される前日の2022年7月7日、参院選の応援で小野田氏のもとに駆け付けた。そしてSNSで「自民党公認のみで戦い抜く小野田紀美候補。厳しい闘い、彼女の鋼の信念に会場は燃えました」と檄を飛ばした。

 注目すべきは、小野田氏は経済安保のほか、外国人政策担当相を務めることだ。小野田氏は国会で在日外国人の不正や、規制が甘いと懸命に訴えてきた。不法滞在者対策などへの実行力に期待がかかる。

 半面、増加する在日外国人への対応は、保守派とリベラル系で真っ向対立する先鋭的テーマだ。国会などで反対勢力による批判は不可避と見られ、激しい論争も予想される。推進力のアピールは時として、揚げ足を取られる危険とも背中合わせとなる。

 また、外国人政策担当の首相補佐官として、松島みどり氏が官邸入りした。外国人問題への並々ならぬ政権の姿勢が見て取れる。

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