ふるさと納税の問題点を菅元総理に進言して“左遷”されたエリート官僚も… 専門家は「制度自体が憲法違反」
「返礼品ありきの制度は不要」
区の財政課長が話を継ぐ。
「区民の皆さんが、ふるさと納税を使って自治体に寄附するという行為自体は否定しません。節税になりますし、得だから利用したいと思うのは人間の感情として当然のこと。むしろ返礼品ありきで自治体間の競争を生む制度設計がおかしいと思います。国には地方の財源が不足する一方、東京は財源が豊かだから格差是正をとの意図があろうかと思いますが、それなら返礼品ありきの制度は不要です。地方交付税という制度がありますから」
大阪府泉佐野市が国を相手取った裁判でも焦点となった国からの交付金。大企業が集中して税収が見込める東京などの大都市と、税収の少ない地方自治体との不均衡を調整するための制度である。
「地方交付税は、その原資の5割弱を東京が負担しています。税収の乏しい地方にお金が回るシステムとして機能していますが、東京23区は不交付団体なので国からの補填を受けられない。ふるさと納税の流出額が、そのまま税収減に直結してしまうのです」(同)
「制度そのものが憲法違反だと思っている」
いったいどういうことか。菅元首相の選挙区である横浜市は、流出額343億円で全国1位だが、実は“救済策”があるのだ。
先の平岡氏によれば、
「ふるさと納税による寄附で本来は得られた税収が流出しても、国から交付金として75%が補填されています。横浜市は交付団体なので実際に減収となるのは80億円前後。一方で不交付団体の世田谷区は123億円、練馬区は50億円が丸々減るわけです。流出額が大きく国から補填を受けられない自治体からすれば、取られるばかりで不満が募るのは当然だと思います」
仮にふるさと納税がなければ、減収分を補填する交付金は必要なかったわけで、それだけでも国にムダな出費を強いているわけだ。まさに本来あるべき税制の姿が、ゆがめられていると言っても過言ではなかろう。
再び前川区長に聞くと、
「民主主義の根本は財政で、これを壊してはいけません。私は制度そのものが憲法違反だと思っていますから、できれば同じ志を持った自治体を束にして集団訴訟を起こしたい。制度自体は菅元首相が始めたわけですが、政治的な動機は不純だと思います。地方へのウケ狙いとしか思えません」
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