ルーブル美術館で155億円相当が消えた大盗難事件 「テロかと思った」現場に居合わせた日本人が語る緊迫の90分

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美術館の外では通常営業が続いていた

「“逆ピラミッド”がある出口から外に出ましたが、その時点では、周辺のブティックは営業していましたし、私が出展した展示会も開催していました。ただその後、閉鎖されたのかどうかはわかりません。建物の外に出ると、大通りには避難した人たちがたくさんいました。警察官のオートバイが何台も美術館の中庭に入っていき、あたりはサイレンやクラクションで騒然とした雰囲気でした」(國澤さん)

フランス国内の反応

 この事件ではけが人などは出ていないものの、國澤さんが証言するように、テロが起きてもおかしくないセキュリティ体制だったことが明るみになりました。「世紀の盗難」として、フランス国内にも大きな衝撃を与えています。

 政府野党やメディア、国民からはルーブル美術館のセキュリティや警備態勢、防犯関連の予算について、批判の声が上がっています。「歴史的、文化的遺産をあっさり盗まれ、国家として恥ずべき事件だ」という声もあります。

 とはいえ、フランスにおける美術館の窃盗事件は今回に限ったことではありません。1911年の『モナ・リザ』盗難事件は有名ですし、2023年にNetflixで配信された『パリの蜘蛛男』は、パリ市立近代美術館からピカソやモディリアーニなどの絵画を盗んだ犯人によるリアルドキュメンタリーです。この作品でも、美術館の警備が手薄になる隙が狙われている様子が描かれました。

今後にも影響が残る事件

 事件当日と翌日、ルーブル美術館は臨時休館となり、通常休館日を挟んで22日に営業を再開しました。

 事件当日はもちろん、翌日も多くの人が来場予約をしていました。日本からツアーで来た団体客も、観光バスが駐車場まで来た後に閉鎖を知らされたようです。ルーブル美術館訪問を楽しみにパリに訪れていた人は少なくありません。

 年間800万人が訪れるルーブル美術館にとって、セキュリティ強化は喫緊の課題です。パリを訪れる人たちからも、こういった犯罪があると他の美術館も含め、危険はないのか、安心して行けるのか心配になるという声があります。

 事件を機に、美術館や文化施設へのセキュリティ強化、そして今後このような犯罪を防ぐための態勢の構築が強く求められています。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

デイリー新潮編集部

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