わずか7分で「155億円」の甚大被害…「ルーブル美術館」強盗犯が狙った「開館直後」という警備の死角 「ピンクパンサーが関与」の声も
155億円!
10月19日(現地時間)、フランス・パリのルーブル美術館から宝飾品が盗まれた事件で、パリ検察の担当者は、経済的な損害だけで8800万ユーロ、日本円で155億円相当に上ることを明かした。
【貴重写真5枚】ルーブル美術館「夜間の館内見回り」に密着!(『芸術新潮』2004年1月号取材)
強奪された宝飾品は9点で、212個のパールと1998個のダイヤモンドで装飾された、ナポレオン3世の皇后ウジェニーのティアラ(王冠型首飾り)や、45.2カラットのエメラルドなどで宝飾されたマリー・ルイーズ(ナポレオンの2番目の妻)のイヤリングなど。
事件が起きたのは日曜日。1日平均3万人が訪れるというルーブル美術館の開館から間もない9時半だった。4人とみられる犯人グループは、セーヌ川沿いにある同美術館南側の「ドゥノン棟」に、バイクやクレーン車などに乗って集まった。目指すは、2階にある「アポロンのギャラリー」。長さは約61.43メートル、高さは約15メートル。壁面や天井を著名な芸術家の彫刻や絵画が埋め尽くす大回廊である。
海外の犯罪情勢に詳しい、国際ジャーナリストの山田敏弘氏はいう。
「ルーブルのように貴重な展示品を扱う美術館は、文化遺産を盗難や破壊から守るため、多層的で厳重な警戒体制を敷いてています。館内はもちろん出入口など、いたるところに監視カメラが設置され、中央監視室で常時モニタリング。全方位、高解像度、赤外線など各種のカメラが設置され、死角をなくすようにしています。入館時には手荷物検査もあります。また、ルーブルは狙われやすいので、閉館した後もセキュリティは万全です。人感センサーだけでなく赤外線ビームもあり、音で異常を検知するセンサー、振動センサーなどで侵入者を即時に検知するシステムがあります」
もとは12世紀に要塞として建築されたルーブル城内にあるだけに、「護り」は完璧のはず……だったのだが、犯人グループは開館直後、クレーン車で2階に上がり、窓ガラスを割って侵入するという、なんとも“原始的”な手口を用いた。同美術館のデカール館長は22日に開かれたフランス上院の公聴会に出席し、「外部を見回るカメラが不足していた」ことを明かしている。
「犯人たちは電動カッターを持ち、トランシーバー、手袋、作業員が着用する黄色いベストを身に着けていました。犯行時間はわずか7分で逃走しています。フランスでは今年に入り、各地で美術館を狙った強盗事件が相次いでおり、組織的なグループが関与していると見られています。事態を重く見たパリ地検が陣頭指揮を執っていた最中に、世界的に有名なルーブルがやられました」(外信部記者)
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