推定患者は最大で1920万人! 知られざる腸の病「SIBO」を悪化させる“意外な”食品リストを公開

ドクター新潮 ライフ

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 健康意識の高い人にとって、もはや「腸活」は常識の一つといえるだろう。ところが、いくら腸に優しいとされる食物を取っても体調が良くならないどころか、むしろ不健康に……。そんな悩みを抱えているとしたら、それは「知られざる腸の病」のせいかもしれない。【松田美智子/作家】

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 体によかれと思って摂取していた食物が、逆に体調を崩す要因となっていることがある。

 例えば、りんごやヨーグルト、納豆は健康的な食品とされ、日々の食卓に乗せる方も多いだろう。さらには、キムチやぬか漬けなどの発酵食品、椎茸やタマネギ、ニラ、サツマイモなどの野菜も腸内環境を整えるために役立つといわれている。

 だが、SIBO(シーボ・小腸内細菌異常増殖)という病気を発症していると、これらの食品が腸内環境を悪化させ、以下のような症状を引き起こす。

 腹部膨満、腹痛、下痢や便秘を繰り返す、おならやげっぷが出る、肌荒れ、湿疹、ニキビ、口臭、手足が冷たいなどの他に、頭痛、肩凝り、慢性的な疲労感、集中力の低下など、全身的な不調が表れる。

 また、意外と知られていないが、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの約90%は、小腸の粘膜で作られている。セロトニンは心身の健康に重要な役割を果たしており、不足すると、後述する脳腸相関を介して、気分の落ち込み、不安感、不眠、動悸やめまいなどの自律神経の乱れが生じる。

 つまり、SIBOを発症して小腸の状態が悪い人は、体調だけでなく、精神状態にも悪影響が及ぶのだ。

病名の診断がつかず、治療を諦める人も

 SIBOは、2024年にWHOが作成する国際疾病分類で個別コードが割り当てられ、正式な疾患として登録された病気だが、国内では認知度が低い。

 そのため、SIBOに対する知識を持っている医師が少なく、治療できる病院が限定される。

 患者が一般の消化器内科を訪れて症状を訴え、胃カメラや大腸内視鏡検査などを受けたとしても、特に異常なしと診断されるのが現状である。

 SIBOはけして新しい病気ではないのだが、なにせ、病名の診断がつかないので、自分は胃弱な体質と思い込み、治療を諦める人も多い。

 整腸剤としてよく使われるプロバイオティクス(善玉菌サプリメント)も、SIBOの患者が服用すると、さらなる腹部膨満を招く可能性があるので厄介だ。

 そもそも、小腸内で細菌が異常増殖するとは、どういう状態なのだろう。

 通常、腸内の細菌は主に大腸に存在し、小腸には少ない。小腸の主な役割は食物を消化し、栄養素を吸収したのち、残りを大腸に送り出すことである。

 だが、SIBOの場合は、大腸にいるはずの細菌が小腸内で増殖し、吸収できない糖質やタンパク質が発酵して、多量の水素ガスやメタンガス、硫化水素を発生させる。その結果、前記のようなさまざまな症状が表れるのだ。

 なぜ、こんな病気になるのだろうか。

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