推定患者は最大で1920万人! 知られざる腸の病「SIBO」を悪化させる“意外な”食品リストを公開

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

「東洋医学に救われた」

 SIBO患者だった60代男性のKさんは、東洋医学での治療を選んだ。

「僕の場合は、漢方の治療を専門にする先生にその知識があったので救われたんです。東洋医学は患者の全身の状態を見て治療しますからね。SIBOであっても、それぞれ体質が異なるし、西洋医学のように一律に同じ薬を出すのはおかしいと思うんですよ」

 西洋医学にやや批判的なのは、相応の理由がある。

「地域で評判の内科クリニックに行って、腹が膨れる、ゲップが出る、便通が不安定、口臭がひどいと話したら、タケキャブとかラベプラゾールとか、胃酸を抑える薬ばかり処方されてね。飲み続けたけど、少しも良くならなかった」

 後で分かったことだが、Kさんは胃酸が少なく、それがSIBOを発症する要因の一つになっていたので、胃酸を抑える薬の服用は禁忌だった。

「病院を変えて、漢方薬で治療を始めたら、少しずつ体調が変化していったので、その時々に合った薬を処方してもらいました」

 投薬以外で指導されたのは、食生活だった。

「基本は昔ながらの日本食ですね。先生に勧められたのは、小麦製品ではなく、米飯を主食にすること。いわゆるグルテンフリーです。好物だった菓子パンとか、ケーキ類もほぼ食べなくなったから、糖質を抑えられたこともよかったのかな。塩分に気を付ければ、和食は日本人の腸に最適だと思います。しつこく言われたのは、よくかんで食べること。早食いは禁物です」

 治療費については、SIBOの治療としてではなく、腹部膨満や便秘、下痢などの改善という名目だったため、保険が適用される漢方薬が処方された。

「僕はイラチ(気が短い)だったんですよ。ちょっとしたことでイライラして、根気がなかった。家族に当たり散らした後は、自己嫌悪で落ち込んでね」

 抑うつ気分や不眠についても、保険適用となる漢方薬があったので、費用面での負担は少なかったという。

「現在は頭の中のモヤッとした霧が晴れた気分です。家族には人相が良くなったと言われます。僕を見ると逃げていた飼い犬が、体を擦り寄せてくるようになりましたからね(笑)」

控えた方がよい食品は?

 西洋医学と東洋医学とで治療法は異なるが、MさんとKさんに共通しているのは、食生活の見直しだ。

 なにをどう見直せばいいのか。それにはまず、SIBOの患者がどんな食物で具合が悪くなるのかを知る必要がある。

 東京原宿クリニックでは、症状を悪化させる食事のランキングを作成していた。

 1位はカフェイン、2位は菓子類、3位が加工食品で、以下、小麦製品、乳製品、アルコールと続く。

 篠原院長によれば、SIBOの患者は、自分が何を食べると具合が悪くなるのか、気付いているという。

「自分はネギがダメ、納豆がダメとか、ある程度は自覚しているんです。ただ、その食物さえ抜けばいいというものではなく、治療を始めて一定期間は高FODMAP(フォドマップ)に分類される食品を控えた方がいい」

 高FODMAPとは、小腸で吸収されにくい発酵性糖質(オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)のことで、これらを含む食品は小腸内で発酵してガスを生じさせるため、腹部膨満の原因となる。

 前述した納豆のほか、牛乳、サツマイモなどがSIBOの症状を悪化させるのは、これらが高FODMAP食品だからだ。

 一方でSIBO患者が食べても安全とされる低FODMAPの食品もあり、こちらを中心とした食事が推奨される。

「食事中は胃酸が薄まらないように、多量の飲水を避け、胃酸の分泌を促す梅干、酢の物を食べる工夫をしましょう」(篠原院長)

 SIBOの食事療法としては、消費量が多い小麦製品を避ける(グルテンフリー)、乳製品を避ける(カゼインフリー)を原則として、その他の高FODMAP食品も減らしていく。

「食事療法は2週間くらいで効果が表れてくると思いますが、長期間にわたって、厳密に食事制限をすると、栄養不足になりかねません。治療を進めるうちに症状が改善され、少しずつ、高FODMAPの食品も食べられるようになるのが理想ですね」

 篠原院長はまた、食事療法は治療の入り口とも話す。

「食べ物だけでは太刀打ちできない患者さんが多いんです。腸内の環境を精査して、その方に特化した個別の治療が必要です。胃酸の低下だけでなく、副腎疲労が重なっていたり、SIBOのほか、SIFO(シーフォ・小腸内真菌異常増殖)を併発している人もいます」

次ページ:まず食事の内容をチェック

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。